センター試験改革に検討忘れがある

山田 肇

センター試験が終わり、いくつかのニュースが流れてきた。大雪で交通機関が乱れて一部会場で試験時間が繰り下げられた。英語リスニングでは、監督者がせき込んだため問題文が聞き取れなかったとして再試験が行われることになった。試験中に監督者がいびきのような音をたて受験生から苦情が来た大学があった。センター試験の結果について得点調整はしないことになった

センター試験は2020年から「大学入学希望者学力評価テスト」(以下、新テスト)に変更される。2016年3月に、文部科学省高大接続システム改革会議の最終報告が公開され改革が決定した。その後、同省では新テストへの移行に関する検討が続いている。マークシートに加えて導入される記述式問題の実施方法・内容、TOEICやTOEFLを新テストの英語科目に代えて利用することなどは方向が見えてきたようだ。一方で、毎年複数回の新テストを実施すること、自宅や高校のパソコンから回答するCBT(Computer Based Testing)を導入すること、試験結果を「等化」して表示することなどは検討が遅れている。

複数回の新テスト実施は、一発勝負が大雪で混乱するというセンター試験の問題を解決する。CBTも同様である。複数回となると試験問題の難易のばらつきが気になるが、複数回の結果を共通の尺度上の得点で表現する統計的操作である「等化」を行えばよい。「等化」はTOEICなどで長い実績がありセンター試験でも利用できたはずだが、今は得点調整という前近代的な手法が用いられている。

TOEICなどにはCBTもあるが、全国に会場を確保しての試験もありアルバイトが監督者を務めている。一方、アルバイトより著しく時間単価は高いのに、大学教員はいやいや監督していびきをかく。TOEICなどでは広い部屋でスピーカーからリスニング問題が流れるが、誰も聞き取れないなどと文句は付けない。他方、イヤフォンで聞くセンター試験では咳がうるさいと苦情が出る。

複数回実施するとなれば怠惰な教員が問題を起こす危険性は増す。全国の大学を動員するよりも、民間に委ねて新テストを実施したほうがお粗末さは避けられるかもしれない。センター試験の受験者数は55万人程度だが、大手予備校の模擬試験は20万人を超える。民間委託は法外なアイデアではない。しかし、このような実施方法そのものは、文部科学省での検討から漏れている。