ソーシャルウェブを永久に変える iPhoneとFacebookの連携 - 渡部薫

2010年05月13日 16:14

AppleとFacebookの最強タッグが誕生するかも?という情報:iPhone OSにFacebookをビルトイン

という衝撃的なニュースがTweetされてきた。
AppleとFacebookが組むのは、どうやらほぼ確実な情報のようだ。これで携帯電話事業者(キャリア)は、もうAppleとFacebookにウェブで勝つことはできないだろう。そのくらいこの提携の意義は大きいのだ。

今年はこれ以上の衝撃的なニュースは、次期iPhoneくらいしかないな。このニュースを向こう100年のソーシャルウェブをすべて変えてしまった記念すべき瞬間にしよう。


携帯電話の電話帳は、個人情報という意味でも、キャリアが持っている情報の中で最も重要なものだった。キャリアはその情報を端末のデータとして扱い、ユーザの所有物としていた。その結果、キャリアはこの貴重な人と人のつながりの情報を活用することができなかった。

キャリアは愚かにも電話帳の重要性を甘くみており、閉じた電話帳アプリでしか提供しておらず、今でいうソーシャルグラフ(人と人のつながり)を構築しなかった。電話帳をブウラザ(HTML)対応せず、オンライン対応にもしなかったし、検索エンジンと連携させることすらしなかった。技術的にはめちゃくちゃ簡単なのに!

これからのウェブは情報のウェブだけではない。ソーシャルウェブだ。Facebookのソーシャルグラフが閉じているという批判を受けることがあるが、すでにユーザは4億人を超えている。たかだか3000万人くらいしかアクティブユーザがいない日本のウェブと4億人の閉じたFacebookウェブとどっちが真の意味でオープンかはわかりきったことだろう。

なぜ電話帳がソーシャルウェブでキーポイントになるか説明しよう。

・そもそも電話帳に入っている人がソーシャル
ソーシャルサービスで一番難しいのがソーシャルグラフを構築していくことだ。携帯電話にはすでに何十件、何百件と友だちの電話番号を登録しており、それはすなわち知り合いのつながりなのだ。AさんにBさんの電話番号が入っていて、BさんにAさんの電話番号が入っていたら二人は知り合いだとわかる。AさんにしかBさんの電話番号が入っていなかったらAさんはBさんのフォロワーだということだ。

・つながりの強弱とアクティビティがわかる
現在のmixiやFacebookではマイミクや友だちリストで人と人のつながりはわかるが、どのくらいの強さでつながっているのかまではわからない。こういうことだ。AさんがBさんによく電話したり、メールしたり、コメントを書いていたらシステムは自動的にAさん→Bさんへのソーシャルライン(つながりの強さ)を太くすることができる。またAさんからBさんへ、またはBさんからAさんへ1年とかある一定期間なんのアクティビティも起きなかったら二人の関係は疎遠になっていっているということがわかる。結果ソーシャルラインが細くなる。切れる場合もある。このような詳細なソーシャルラインのデータを持っていたのがキャリアだったのだ。

・電話帳の中にいる人は実在する人
ウェブの欠点でもあり、利点は実在しない人間を存在させることのできるマルチアイデンティティ性だ。これはこれでいい意味でも悪い意味でも機能する。しかしソーシャルウェブ社会で経済活動が活発になってくると必然的にその人の信頼性が求められるようになり、実在する人かどうかわからない人と、実在する人とわかっている場合とでは信頼性の担保価値が違う。電話帳というのはFacebookの言う実名主義が担保されるのである。実名を嫌う人は公開ネームを匿名にすることだって可能だ。

・プライバシーコントロールという概念
キャリアや携帯電話メーカーは端末に入っている電話帳データを個人情報として漏洩を恐れている。したがって彼らに電話帳データをキャリアのサーバにゆだねて活用するなど怖くてできなかったのだろう。オールド世代は電話帳に浮気相手の番号が入っていたり困ることがあるようだから公開したくないという理由もあるだろう。

今の若い子は違う。彼らは携帯電話の中身を公開することにも、日々のアクティビティを公開することにも躊躇しない。プライバシーに関する考え方が根本的に違うのだ。同時に彼らは小さなときからプライバシーコントロールというスキルを身につけている。だれにどの範囲の情報をどこまで見せるか、というスキルだ。時々問題もおこるがそうした失敗はユーザのコントロールスキルを磨き上げているのだ。

・電話帳には膨大なアクティビティデータが眠っている
電話帳に入っているのは人の電話番号だけではない。オフィスやレストラン、ショップの電話番号も入っている。今この瞬間どこにどれだけ電話がかかっているか統計データが取れれば、ランキングパラメーターとして利用できる。リアルタイムラインキングデータだ。これが最近ウェブのトレンドであるリアルタイムウェブのパラメーターになるはずだった。キャリアはその膨大なデータを所持していたにも関わらず、それを活用できなかった。

ほかにもたくさんの利点があるのだが、ソーシャルグラフの価値を理解できなかったキャリアは、これから限りなく通信という土管屋に成り下がって行くだろう。AndroidもTwitterと連携するだろうし、Facebookとも連携するだろう。いずれにせよ、iPhoneもAndroidも電話帳というソーシャルグラフを、ウェブに委ねることになるのだ。

個人的には2007年に電話帳のオンライン化、検索エンジン連携、ウェブブラウザ対応、アクティブフィード配信、レコメンデーションなどFacebookが電話帳になる前にできること、という企画を提案し、実際にプロトタイプの開発を進めてきた経緯がある。しかしおそらく当時ウェブを理解しなかった一握りの幹部によってこの計画はプロトタイプで終了した。当時何度も、Facebookが携帯電話の電話帳になったとき、キャリアの主導権は完全に失われると警告した。そういう意味ではついにこの時が来たか、という感じがする。結論から言えば、あのときプロジェクトが進んだとしてもFacebookの驚異的なソーシャルグラフの拡大にはもはや誰もついていけなかっただろう。多くの人はまだTwitterがあるじゃないかと思うかもしれないが、みなさん自身のTwitterプロフィールに電話番号が入っているだろうか。Facebookプロフィールには電話番号が入っている(可能性が大)から電話帳になり得るのだ。

Apple iPhoneやiPadが目指しているのはiPhoneやiPadのハードウェアで儲けることではない。このウェブというデジタル情報社会のデジタルコンテンツ流通を押さえようとしているのだ。音楽、映画、ドラマ、写真、そして電子書籍。Amazonなどのショッピングすらも商品情報という意味ではこのプラットフォームを経由していくだ。あの人がこんなものを買ったよ、とか今クーポンが配信されたよ、お得だよ、この店の料理がおいしかったよ~というフィードが飛び交うのはFacebookウェブであり、その情報流通プラットフォームがiPhoneでありiPadだ。対抗できるのはAndroidくらいだ。

そして今ソーシャルウェブは位置情報の獲得戦争に入ったことに気づいている人も多いだろう。AppleもGoogleも今や位置情報戦争に真っ向から対決している。FacebookやTwitterを使うとき、その人がどこにいるのかという現実世界に紐づいた情報を取得するのはハードウェアであるiPhoneやiPad、Androidだからだ。もう勘のいい人ならどんなサービスが創造されるか目に見えるだろう。

ウェブがリアルタイム性を持つようになればなるほど、人は端末に依存し、そしてその情報にすぐアクセスできる環境を欲する。アクセスできるという手段は、ブラウザやメールや、Twitterだけでない。予約したり声でコミュニケーション取るために電話というアプリケーションが生きるのである。

AppleとFacebookの協業が発表されるのは6月のApple Worldwide Developers Conference 2010だそうだ。この日をキャリアがコンテンツ流通を支配できていた最後の日と記憶することにしよう。

起業家 – 渡部薫
Twitter ” sorahikaru
Facebook ” kaoru watanabe

時間があれば併せてこの記事も読んでほしい。個人的にはマーク・アンドリーセンが考えるFacebook Webに期待している。
2009年ウェブの最大ニュースはマーク・アンドリーセン

次の大きな変化はAppleがリビングルームに50インチ以上のApple TV(iPhone OS)を出すとき、アンドリーセンが新しいモバイルブラウザを出すときかな。

2007年以前に使ったプレゼンの一部を紹介しておく。当時ソーシャルグラフの電話帳がなぜすごいのか一生懸命説明したが通じず(涙)
MSBとは当時の企画名でモバイル・ソーシャル・ブックの略

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最終的に情報やコンテンツはすべて人に紐づく。人の信頼性がその情報の価値を決めるのだ。これをソーシャルランキングと言ったりピープルランキングという。価値ある人からバックリンクをもらえればその人の価値も上がり、その人に紐づいた情報やコンテンツの価値が上がって行く。

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