月を追いかけるGoogleのクラウド - 渡部薫 @sorahikaru

2010年06月23日 00:03

001昨日、さくらインターネットからクラウドコンピューティングに最適化した国内最大級の郊外型大規模データセンター(DC)を北海道石狩市に建設すると発表があった

このニュースでさくらインターネット(3778)の株価はストップ高(11.8%)だったらしい。めでたいことだなと。まだできてもなく、2011年秋に竣工予定だというのにここまで株価が上がるのか。まあ、国内の都市型データセンターとか、クラウドコンピューティングをパズワードに使ってしのいでいるところよりはましだろう。

しかしGoogleが月を追いかけるクラウドを構築していると知れば、果たして安泰としていられるだろうか。


それにしても、できてもいないデータセンターにこれほどの期待がかかるなら、Googleが進めているSF的とも思える計画を知れば考え方も変わるだろうか。このモノの見方は、クラウドコンピューティングをエネルギーと見なすか、単に仮想サーバの大規模な集合体であるデータセンターと見なすかで大きく違う。僕が常に言っているのはGoogleのクラウドは20世紀の電力に相当するエネルギー、すなわち電気の上位レイヤーのコンピュータパワーというエネルギーのことだ。

なぜGoogleがこれほどまでにエネルギー産業に投資するのか、なぜこれほどまでにクラウドコンピューティングに引きつけられているのか、その一端は、Google Japan の村上会長のインタビューからも読み取れる。

追求してきたことの延長線上が、クラウド・コンピューティングだった

言い換えれば、
「Googleが追求してきた検索エンジンの延長線上にあったのが、人類が求めている最終エネルギーだった。
人類が生きて行くために必要なエネルギーが食料でも電気でもなく、コンピュータパワーだった」ということだ。

なんのことだかよくわからない人はまずこの記事を読んでから読み進めてもらうといいかもしれない。
Google 人類史上最も重要なエネルギー企業になる(かも)

本題に入ろう。
Google が月を追いかけているのはご存知だろうか。
さくらインターネットのように寒冷地にデータセンターを建設するのはとうの昔に終わっている。今やGoogleのクラウドは地球を一周しているのだ。2008年の時点ですでにこれだけの規模である。
31)

Googleはデータセンターの規模を追いかけているのではなく、電力消費量の最適化を追いかけている。いかに電気エネルギーを効率よく使うかだ。発電所で電気1を作ったら、その1の電気をCPUを動かすためだけにすべて使いたい。データセンターを冷やすエアコンや照明などに電気を使いたくない。Googleのデータセンター規模になれば明かりやエアコンの電気だけでも相当なエネルギー消費量になるからだ。

Googleのデータセンターは、エアコンで冷やす前世代型(日本のIDCは未だにここだろうが)から、水冷方式に変わり、次の温められた水を外気で冷やすようになり、今では外気そのもので冷やすタイプになっている。村上会長のインタビューでも、この方式でやっても案外壊れないし、壊れても無視した方がコストが安いと言っている。Googleではさらにそれを効率化するために2つの方法を取ろうとしている。

ひとつめは、海中の中にデータセンターを作ること
ふたつめは、月を追いかけるデータセンターだ。

どちらもコンセプトは、電気エネギーを生みながら、生み出したエネルギーをCPUに費やし、そのまま冷やすという循環システムのことだ。

月を追いかけるデータセンターについて説明しよう。
Googleの規模の経済はひとつのデータセンターをフットボール競技場の何倍も大きくすることではなく、今では地球規模でデータセンターを線で結ぶ規模のことだ。なぜ?

Googleはまず世界で必要なコンピュータパワーの2倍用意する。なぜかというと、一方が動いているとき、一方を休ませるためだ。人間に睡眠があるようにGoogleクラウドにもエネルギーを充填するための睡眠が必要だ。

002Googleクラウドの理想型は、昼の太陽(ソーラパワー)で電気エネルギーを蓄電し、夜(月は夜の比喩)月の出ているときにデータセンターのCPUを動かし、昼より気温の低い夜の外気でCPUを冷やすのだ。そしてそのコンピュータパワーを地球の裏側の昼の世界へインターネット網を介して送り出す。これがGoogleのMoon Cloudの基本コンセプトだ。

人類のエネルギー革命は、化石燃料からどれだけ効率よく電気エネルギーを取り出すかという歴史と、どれだけ効率よく電気エネルギーをA地点からB地点に運ぶか、ということだ。残念ながら今の技術では、電気を損失させず地球の裏側に送り出すことも無線で送ることもできない。(R&Dの範囲では出来るが実用的でない)なぜエネルギー損失が起きるかというと電気エネルギーがアナログエネルギーであるためだ。音楽がレコード(アナログ)からCD(デジタル)に変わったように、電気エネルギーをアナログからデジタルに変換してしまえば、地球の裏側に1秒以内にエネルギーを送り出すことができる。

少し詳しく説明しよう。
東京がビジネスタイム(昼)のとき、コンピュータパワーを消費する。そのコンピュータパワーは日本の反対側の北米や南米で作られるようになるかもしれない。実際、すでに多くの日本企業がGoogle AppsやGoogleではないAmazonのEC2と言われるクラウドコンピューティングを利用している。米国のGoogleクラウドからすれば米国が夜のコンピュータパワー消費が少ないときに日本で使ってもらえれば、エネルギー効率が高くなりハッピーだろう。

003したがってGoogleの東京のデータセンターはその間ソーラーパワーで蓄電するのだ。もしくは電気というのは昼よりも夜の電気の方が安いのは常識だから、夜、東京電力の電気を使って生み出したコンピュータパワーを別の地域へ送り出すのだ。電気は国境を越えることができないが、コンピュータパワーは国境を越えることができる。おそろしいまでにGoogleのクラウドはエネルギーにどん欲なのだ。

夜は昼より気温が低い。
たったこれだけの理由だ。

このようにすでに地球規模でクラウドコンピューティングのエネルギー効率を図っているGoogleと、何も考えていない日本のデータセンターの未来を比較して我々はどう対処したらいいのだろうか。果たしてGoogleはそんな壮大なことは考えていないと目を背けるのか、日本の優れたコンピュータエンジニアやエネルギーエンジニアは、きっと地球規模のクラウドエネルギーを作るGoogleより効率的なエネルギーを生み出せると信じるべきか。その判断はこの記事を読むあなた自身に委ねよう。

最後にジュディ・フォスターの有名なSF映画「Contact」のワンシーンを紹介しよう。

二つ作れるのに、どうしてひとつしか作らない理由があろうか。一つは秘密裏に。どうだ、乗ってみたいかね。

S.R. Hadden: First rule in government spending: why build one when you can have two at twice the price? Only, this one can be kept secret. Controlled by Americans, built by the Japanese subcontractors. Who, also, happen to be, recently acquired, wholly-owned subsidiaries…
Ellie Arroway: [speaks with Hadden] … of Hadden industries.
S.R. Hadden: They still want an American to go, Doctor. Wanna take a ride?

追記
Twitterのコメントで、スケールが大きい、壮大だというのをいただいた。そうだよ、Googleは考えるスケールも実行力も桁違いに大きいんだよ。今の日本の小さな組織、つまんない社内政治、ちっぽけな出世競争から抜け出して、スケールの大きなことを考えよう、一歩踏み出そう。小さいとこにいると自分が小さくなるだけだ。外に出よう、自分にとって大きければいいんだ。必要ならGoogleの力を使えばいいんだ。

起業家 渡部薫
Twitter:sorahikaru

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