日本の政治制度の改革 - 参議院の廃院と首長の直接選挙制度 -中谷孝夫

2010年07月22日 08:52

7月11日の参議院改選で発生した民主党の敗北により、かってあった「自民―民主の逆ネジレ現象」が再発した。「参議院のネジレ現象」は、法案通過の困難性の問題もあるが、一番大きな問題は法案通過数の激減によって、国庫が負担する「立法の経済的なコスト」が急激に増大する点である。財政が破綻に直面している現状からしても、改革の実施が緊急を要する事態になっている。今回で2度目だが、将来も発生する可能性を考慮に入れると、「ネジレ現象解決の最善の方策」は、参議院を廃院にするのが一番効果的な対策だろう。仮に参議院議員一人の直接経費が年間1億5千万円と仮定すれば、247人の参議院をなくすることによって、年に370億円を節約できる。これに間接費はいくらいうはっきりとした数字はないが、間接費が直接費の5割と仮定すれば、総額で556億円の経費の節約となる。


参議院は「憲法の番人」とか美化されて呼ばれるが、実態は衆議院議決の後認をしているだけで、何のメリットがないどころか、逆に「政治決定を遅らせている」という大きな欠点がある。

衆議院の定数も現在の480人から250人に半減させる。原則的には各県4人で全国合計200人であるが、50人を人口の過多により追加配分をする。東京は追加6人、大阪、神奈川、北海道は追加2人という具合に、残り50人を追加配分して、最終的に定員を250人に調整する。この衆議院定数の230人の減少で、参議院廃院程度の費用が節約できるだろう。つまり両院で1100億円程度の予算の節約が可能である。その上、定員の削減からくる衆議院議員の質の飛躍的な向上のベネフットは金額に換算出来ないくらい大きいくて重要だ。

日本政治実態の欠点の一つとして、憲法を含めて、既存の法律改定が現実よりもかなり遅れていることであろう。「公務員改革」、即ち「公務員数と報酬の削減」の必要が議論されている今日、「参議院廃院」はその前にやるべき事だろうと思う。政治家だけを例外に取り扱う必要はないだろう。「リストラの痛み」はトップを含めた全階層で負担するのが公平だ。アメリカに住んでいて政治番組をテレビで見ていると、いかに日本の政治家の資質が低いかということを何時も痛感する。これは日本の選挙制度において世襲と知名度が集票の一番大事な要素になっているからだと思う。企画力や政策能力が投票で高く評価されているとは思えない。

日本の財政危機は、国民がよく理解していると思う。国の累積債務が1000兆円近くになり、予算も40兆円足らずの財政収入に比べて、83兆円を支出していたらどうなるかは、高校生でも分かることだろう。その40兆円のうち、人件費が32兆円とも言われている。その収支を合わせるために、44兆円の国債を発行している国は、世界の先進国でも日本だけだ。先日カナダで開催されたG20会議でも、「日本は例外的な扱い」を受けた。はっきり言って、「日本は箸にも棒にもかからない」と言うことだろう。「衆参議員削減」が実行に移されれば、「公務員改革」がそれに続くだろう。政府は、来年の予算要求枠を一割減にしようとしている。ということは、来年の予算の支出額は75兆円程度になると言うことだろう。仮に収入が微増で40兆円程度とすれば、なお35兆円程度の収入不足になる。これでは、いくら日本が「海外投資額が世界一」だと言いわけしても、財政悪化のスピードの方が速くて、いずれ国債の国内消化も限界に来るだろう。ある時国民が、突然簡易保険に危機を感じて、預金の引き出しに走れば、結果がどうなるかは明瞭である。

アメリカに長く住んでみて、日本の行政コストの高さに驚く。アメリカの最高裁判事の定員は9人に比べて、日本は15人だ。これも7人で十分やっていけるだろう。最高裁は合議制なので奇数であれば良い。「リストラの必要性」は地方公共団体にも言えることであって、日本の県会や市会議員の規模は最低半減しても十分にやっていけるだろう。

「リストラの痛みを全員で負担するという公平の原則」から、皇族も「年金を貰って京都か奈良へ隠居してもらって、大統領制にする」方が、近代国家の体制により近くなるだろう。皇族にとって「束縛されて人権のない生活から、普通の国民として、自由に生活される」方が人間的にも良いのではないだろうか。

今の首相制度は、「国民が直接首長を選んでいない」という根本的な欠陥がある。今日の流動的な世界情勢に、「国民が直接選んだ大統領」が迅速に対処するという体制をとる方が、激変の時代に適合しているように思う。いま天皇陛下が行っている「認可を主とする国事行為」は最高裁長官が行えばよい。これで「三権分立のより実際的な姿」に少しでも近づくことが出来る。大統領は赤坂御所に住む。皇居は「日本が21世紀に生き残れる最先端の研究所」に改造するという土地の効率的な利用を考える時期に来ていると思う。東京の皇居を中心とした交通網は、環境問題にとっても最悪だ。

もう日本は小手先だけの改革では、いずれ破綻する時期に来ていると思う。ただ、「変革に伴う苦痛は、全ての層で負担」しないと自殺件数の急激な増加や暴力的な社会変革が突然発生しないとも限らない。今回の選挙の中心議題であった消費税率引上げの問題は、経費の削減が前提になるにもかかわらず、それをしないで、増税だけを議論したので民主党が敗北したのであろう。予算だけではなく、社会体制の中に「仕分け」をする対象はまだたくさんある。国民の多数が平等に負担する形の財政改革の増税は容認すると思っている。

    2010年7月20日     米国ミネソタ州にて

「中谷孝夫」View from Lake Minnetonka(ミネトンカ湖畔からの観察記)
在米44年、元ウォール街の証券アナリストの日本観

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