なぜ情報がクラウド化するのか - 渡部薫 @sorahikaru

2010年08月04日 22:15

先日、某新聞社から取材を受けた時に答えた内容です。新聞の紙面では紹介しきれない、「なぜ」があるので興味がある人はお読みください。

Q、ビジネス現場でお勧めのiPadの活用法は。
従来のスマートフォンやノートPCに比べ、生産性が高まるといった具合に、アイデアやアドバイスがありましたら教えてください。

A
・情報へアクセスできるスピード
 iPadは1秒で起動。アプリやブラウザを立ち上げて必要な情報にアクセスするのに数秒しかかかりません。
 スマートフォンは同じくらいのスピードを実現しますが、画面サイズが小さいので売上データや顧客データ、プレゼン資料などへのアクセスは厳しいです。スマートフォンはメールやコミュニケーション情報がメインです。
 ノートPCはスリープ状態でも起動までに数十秒かかり、電源からだと数分かかります。そこからまたアプリケーションやブラウザを起動し、ネット接続しているととても時間がかかります。カバンやバッグから取り出すのも面倒です。
 ちょっとした隙間時間(移動時間や空き時間)に常に情報収集できるのは大変有益です。


・顧客や取引先とのコミュニケーション
 顧客や取引先のとのコミュニケーションは、ますますリアルタイム性を求められます。コミュニケーションスピードが重要です。また膨大な数の顧客および取引先からの問い合わせに、その都度スピーディーに回答しないと溜まる一方で処理できなくなります。幹部、エグゼクティブクラスでは判断を求められることが多いので、そうしたYes, Noの回答がすばやくできるだけでも効果的です。

・移動時間の効率化
 移動する時間に情報にアクセスできる利便性がありますが、もうひとつはiPadによって無駄な移動をなくすことができるようになることです。例えば、営業マンが会社に戻らないとアクセスできないような情報でもiPadであれば十分です。外回りの~~マンという人たちは無数にいるわけですが、すべての人たちにノートPCを支給することはできませんでした。画面サイズ上、スマートフォンで代わりになるものでもありませんでした。

Q、iPadの登場でますます、クラウドサービスが身近に利用するシーンが増えることは間違いありません。iPadを買ったら、まずは試すべきクラウドサービス(ビジネス用途に役立つ)がありましたら、ぜひ、教えてください。

A
絶対にお勧めするのが、Gmail / Google Appsを中心としたクラウドを構築することです。
iPad でクラウド型ビジネスを強くする必殺のアプリ3選

大企業や会社のセキュリティの都合などでGmail / Google Appsに移行できない人はともかく、ビジネスで活用したいのであれば、iPhone / iPad / Gmail – Google Appsの連携は欠かせません。

Gmail / Google Appsを使えば、大容量のストレージも付いてくるばかりか、Word, Excel, PowerPoint, PDFといったビジネスコミュニケーション上で流通するほとんどのファイルをどんな端末からでも閲覧できるようになります。

Google Mobile App :Googleのクラウドサービスを利用するためのアプリ
※各アプリはこちらから探してください。
 Gmail:クラウドメール
 Document:Word, Excel, PowerPoint, PDF各種ビジネスファイルを管理
 Photo(Picasa):ビジネスに必要な写真を管理
 Google Video(Google Apps有料のみ):社内ビデオの管理
 Google News:日々のニュースをチェック
 Google Reader:RSSリーダー
 
DropBox:大容量クラウドストレージサービス
 DropBoxは単体でも使い勝手のいいクラウドストレージサービスだが各種アプリと組み合わせることによって使い勝手のいいファイル管理システムになる。

GoodReader:各種ファイル閲覧アプリ
 Google DocsやDropBoxと連携させて各種ビジネスファイルを簡単に閲覧するアプリ、顧客先でのプレゼンテーションにも役立つ

Evernote:クラウドメモ帳
 他のメモ帳と比べて機能のシンプルさとスピーディーな編集が可能。ファイル管理や他人との共有もできる。テキストだけでなく、音声、写真の管理も可能。iPhoneやPC/ウェブとの相性もよい

ScanSnap:スキャナー
 話題の電子書籍ではないが、ScanSnapは簡単に書籍をデータ化できる。スキャンしたデータを DropBoxに転送し、GoodReaderやi文庫HDで開けば自作電子書籍のできあがりで、コピー書類とおさらば

i文庫HD
 電子書籍リーダーだがPDFは画像、zipファイルの閲覧もできる。iBooksに劣らないその美しいインターフェースはプレゼン資料を見せるにも役立つだろう

Keynote
 いわずとしれたApple公式プレゼンテーションアプリ。

iWorks, Numbers:iPad用に用意されたオフィスアプリ

Adobe Ideas
Adobe 社が提供するシンプルな手書きドローアプリ、ちょっとしたアイデアをまとめるのに一筆なアプリ

AudioNote
録音機能付きオーデォーノート。録音中にテキストメモを付けるとあとから録音を再生するときテキストメモも再生する。テキストメモを指定するとそこから再生することができる。議事録の作成や会議をまとめるにの最適だろう。

しかしどんなアプリの前にもけっきょくのところ世界中のウェブにアクセスできるSafariには敵わない。

Safari:ウェブブラウザ
 ブラウザさえあれば日常的な情報収集、情報発信、情報編集、分析、レポーティングなどすべてできてしまう。3秒でウェブにアクセスできるiPadのブラウザこそが最強のビジネスツールだろう。

————————————–
しかし本当に重要なことは、iPadがどのようなタイミングで登場したか。その背景を探りつつ、ワークスタイルの変化を追うことです。

5つの大きな変化があります。
◆コンテンツ ◆スマートフォン ◆クラウドコンピューティング ◆モバイルブロードバンド  ◆リテラシー

◆コンテンツ(情報)の変化
・1994年からインターネットが一般的な商用サービスを始めて15年経った
 →ウェブページはGoogleがインデックスできないくらい膨大に増え、ニュースからエンターテイメントまであらゆる情報がウェブに対応した
 →写真、音楽、映画(動画)など膨大なコンテンツがウェブに対応した
 何をもたらしたか
  あまりに膨大に情報が増えすぎて、あまりに膨大にあらゆる情報にアクセスできるようになったので、情報を消費しきれない
   →24時間365日情報にアクセスしたい

◆スマートフォンの変化
・2000年ごろi-modeが誕生し、一見ケータイからウェブにアクセスできるようになったと思われがちだが、i-modeという閉じたインターネット空間でしかなかった。インターネットの膨大な情報にアクセスするにはi-modeは非力過ぎた。
 →消費電力の低いCPUの開発が進んで、モバイル端末の処理能力が劇的に上がった。ムーアの法則は今モバイルCPUで起きている
  →モバイルハードウェアの劇的な進化(Appleが主導し、Googleが追随した。この2社だけが真のインターネットを理解していた)

◆クラウドコンピューティングの変化
・クラウドコンピューティングの定義はまちまちだが、非力で小容量のスマートフォンの弱点を補足するために必然的にそうせざる得なかった。
 →手元は高速、雲は強力
  →スマートフォンはデータの高速表示をすることにCPUを使い、クラウドで高速強力にデータ処理するアプリケーションと連携した。
   (Google Search / Gmail / Google Map / YouTube / Evernote / SalesForceなど代表例)

◆モバイルブロードバンドの変化
・スマートフォンとクラウドコンピューティングを結ぶのがモバイル(ワイアレス)ブロードバンドで、特に先進国でようやく3Gネットワークが実用に耐えられるようになった。(日本は1歩先を行っている)

スマートフォン、クラウドコンピューティング、モバイルブロードバンドの3つが繋がったことによって、ウェブ上の膨大なコンテンツにようやくモバイル端末からアクセスできるようになった。これが変化の中で、特に大きかった。

◆リテラシーの変化
インターネットの革新を押し進めているのは世代的に70年代生まれの世代である。1995年から2010年にかけて、20代だった70年代(正確には65年から75年くらい)のビジネス層が、ビジネスの第一線およびエグゼクティブ層に上がってきた。これによってビジネススタイルのIT化が急速に進んでいる(日本はその変化に一番遅れている)

■ スマートフォン、クラウドコンピューティング時代のワークスタイル
・顧客や取引先との永続的な関係作り
60年代以前のビジネスマンが電話とファックス(テレックス)、会議(出張)を中心としたビジネススタイルなのに対し、クラウド時代のワークスタイルはメール、オンライン(ウェブ)、コラボレーション(オンライン)を中心としたビジネススタイルである。

これはすなわち顧客や取引先からの膨大なニーズ(情報)へ限りなくリアルタイム(24時間 365日)応えなければならない状況を生み出した。

これに対応するためのITスキルは、ワードやエクセル、閉じたソフトウェアの情報処理ではなく、メールやソーシャルグラフ、リアルタイム、コラボレーションによるコミュニケーション情報処理能力である。

情報を、膨大に、リアルタイムにかつ非同期に、コミュニケーションを取りながら処理すること
そしてできるだけ自分と最終顧客の距離(情報プロセスの距離)を短くすること

————————————–
これらのビジネスシーンの時代的背景があって、iPadをビジネスにどう活用するか、というテーマになります。もしくは知らず知らずのうちにその荒波で揉まれているとかなんとか付いていかないとと感じている人は多いです。

したがってiPad のアプリケーションをどう使うかだけではなく、迫り来るリアルタイム情報ビジネスに対応するためにどういうアプリケーションを使いこなすべきか、ということです。

・どうやって24時間、365日情報に触れられるか
 →24時間ビジネスニュース、情報を流してくれるアプリ:日経ウェブ版もそうでしょう。RSSリーダー、Twitterrのリスト、各ニュースサイトのアプリ
  目指すべきスキルはいかに早く、正確に自分のビジネスの業界の情報にたどり着けるか、ということです。グローバルに。
  →BB2Cもいいアプリ
 
・どうやって24時間、365日、顧客や取引先とコミュニケーションを取れるか
 →メール(メールはインターネット普及期以来いまだに最大のソリューションである)
  →クラウドメール(Gmail / Google Appsなど)メールは膨大かつ大量に処理しなければならないのでクラウド型、ローカルに保存できない
   →添付ファイルの処理(クラウドでないと処理できないし、検索できないし、共同編集できない)

 →ウェブアナリティクス
  →顧客がどこから自社のサービスや商品にアクセスしてくるのか、また顧客との関係の情報(CRM)、販売状況などをりあるタイムで知るべき
   →Google Docs、SalesForce、自社データベース対応ソフトウェア

・どうやって膨大に流れる情報の中から価値ある情報を見つけるか、見逃さないか
 →ソーシャルフィルタリング:信頼できる人に情報のフィルタリングをしてもらう
  →TwitterやFacebookで信頼できる人を探しフォローすること
 →RSSリーダーのキーワード単位で情報をフィルタリング
 →Google Newsなどのロボットアルゴリズムで情報をフィルタリング

 →イベントやブログ、Twitter、ニュースなどで気になる人を見つけたらすぐGoogle 検索、Wikipedia検索、Facebook、Likendin、Twitter検索
  →そこから時間の許す限り情報を追いかけて行く

・どうやってソーシャルフィルタリングの精度を上げていくか
 →自分自身が得意分野の情報発信者となり、その分野から他分野へソーシャルネットワークを広げて行く
 TwitterやFacebook
  →自分が価値のある情報を発信できるようになれば、価値のある人からフォローされソーシャルランクがあがる。そうするとその人にまた情報が集まる。

・どうやって情報を共有するか
 →複数の人たちがリアルタイムで情報処理をしなければならなくなるとだれのローカルPCにデータを置いておくということはできなくなる。Google Docsなどクラウド型のオフィスアプリケーションを利用する。

・作業は役割分担ではなくコラボレーション
 →複数の人と情報共有するとき作業を役割分担するだけでなく、だれもが同じような作業ができるようコラボレーションすることが必要になる。SalesForceやGoogle Docsではそうしたコラボレーションによる作業効率化を図るアプリとなっている。

こうして見れば、クラウドコンピューティングやiPad、スマートフォンなどは単なる道具に過ぎないことがわかるだろう。いつの時代でも、道具を身につけるだけでなく、使いこなしてこそ、その真価を発揮するのです。働き方を変えるのも、戦い方を変えるのも結局はあなた自身の決断に委ねられるのです。

渡部薫
Twitter@sorahikaru
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