国策研究開発の意義 -山田肇

2010年08月23日 08:13

情報通信政策フォーラムではIEEE TMC Japan Chapterの協賛を得てセミナーシリーズ「情報通信の競争力」を開催してきた。すでに3回実施したセミナーでは講演者から厳しい指摘が続いた。

日本と世界の研究動向について発表した科学技術政策研究所の奥和田氏は、通信・信号処理など情報通信系の研究領域が大きく伸び現在の主役であるが、日本は電気電子関係が多く情報通信関係が少ない世界の中で特異な存在、と指摘した。超伝導やロボット工学などの特定の領域で強みを発揮し、独特の「選択と集中」が起きているという。しかし、その電気・電子系でも世界2位から東アジアの1国へと低下しているそうだ。日本は世界のICT革命のトレンドに背を向けて、R&Dでもガラパゴス化が進んでいるのではないか、というのが奥和田氏の意見であった。


富士通総研の根津氏と湯川氏は、日本のインフラは世界一だが、競争力にもイノベーションにも結びついていないという。 日本は通信機器の輸出が減り続け、差し引きでは輸入国の位置付けになっている。イノベーションはベンチャー企業が起こすもので、それへの投資が少ないのが課題だと両氏は指摘する。このような観点では、NTT再編や「光の道」に関する政府議論は瑣末なこと、というのが両氏の意見であった。

標準化活動と企業経営については、山田肇が講演した。標準を道具として経済的利益を上げるために個々の企業が進めるのが標準化活動であり、利益を実現する「普及の仕掛け」の埋め込みが戦略的課題である。政府の役割は限定的で、パートナー作りに役立つ国内市場開放施策などが期待される。総務省の 「大本営発表」は続くが、地デジで南米が採用しているのは日本方式を基にしたブラジル方式であるが、これも最初に普及の仕掛けを埋め込まなかった結果、と指摘した。

これらのセミナーを受けて8月26日にシンポジウム『国策研究開発の意義』を開催する。科学技術振興機構の有本氏、慶應義塾大学の小川氏、NTTドコモの竹田氏に加えて、アゴラ常連の池田信夫氏と松本徹三氏をパネリストにお迎えする。科学技術基本計画は15年間でどのような成果を上げたのか、国策プロジェクトの多くは成功したのか・失敗したのか。そもそも成功と失敗をどう判断すべきか、日本発の技術を「ひいき」する施策は競争力に役立つのか、インフラよりもアプリケーションを、大企業よりもベンチャー企業を、学界の権威者よりも若手の可能性を重視すべきではないか、などを議論した上で、最終的にには、変化の激しい情報通信分野で、「時定数」の大きな国策研究開発を進める意義・必要はあるのか、について意見を交わすつもりである。

多数の参加をお待ちしたい。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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