周波数オークションの進め方

2010年09月07日 21:42

政府は、10日に閣議決定する緊急経済対策に周波数オークションの実施を盛り込むことを決めた。といっても欧米で行なわれているオークションとは異なり、既存業者の「立ち退き料」を新規参入業者が払う際に、複数の業者が申請したら高いほうに落札する変則的なものだ。


このようにアドホックにオークションを行なうと、わずかな帯域に応札者が殺到して異常な高値になり、非効率な結果になるおそれが強い。やるなら私が提案したように、すべての免許人を対象にした逆オークションを行なって政府が電波を買ってから、通常の周波数オークションを行なったほうがよい。

ともあれ、総務省のきらいな市場原理を導入することになったのは1歩前進だ。今後は、すべての帯域についてオークションを行なう制度改革を進めてほしい。総務省では、まだ欧米で行なわれている普通のオークションに抵抗があるようだが、その理由がよく理解できない。主な論点はFAQに書いたが、ここに書いてあるような初歩的な疑問をまだもっている電波官僚がいるようだ。

特に問題なのは「過去に無料で免許を得た業者と不公平になるので、携帯電話の帯域はオークションにかけない」という方針らしいことだ。これはナンセンスである。公平性というのは、これから行なう意思決定について考えることであり、過去と未来の公平性を保つことは不可能だ。たとえば銀座で「先祖代々の土地で営業している店と不公平だ」という理由で、土地取引を禁止したらどうなるだろうか。

この論理でいけば、今後も永遠に携帯電話の帯域は無料で割り当てられることになるが、もっとも収益性の高い携帯電話を無料にしたら、有料で割り当てる帯域はなくなるだろう。不公平だと思う業者は、応札しなければいいのだ。そうすれば、他の会社が落札するだろう。その会社にとっては、その周波数でもうかるかどうかだけが問題で、公平かどうかなんて問題ではない。

「資金力のある業者が帯域を買い占めて弱小業者を閉め出す」などという話もナンセンスである。700MHz帯の場合には、ITSとFPUをやめれば3スロット取れるが、どんな高値を出しても取れるのは1スロットで、全帯域を買い占めることはできない。1000億円出しても2000億円出しても取れる周波数は同じなのだから、評価額以上の落札価格をつけることはありえない。免許料の高騰を防ぐには、オープン周波数オークションという方法もある。

もちろんオークションにも問題はある。特に大きな懸念は、2000年の欧州の3Gオークションのように、過大な落札価格がついてキャリアの経営が破綻することだ。これは電波官僚がよくいうように「免許料が料金に転嫁される」ためではなく、転嫁できないために起こるのだ。これに対応するには第二市場を設ける必要があるが、これもあまり取引を自由にすると、投機目的で周波数を落札する業者が出てくるおそれがある。だから最初は、VHF-Highのような小さな帯域でテストしてはどうだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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