原因からデフレを考える-根津修二

2010年10月29日 22:00

デフレが日本経済の深刻な問題であることはいまや共通認識だが、その解決策については百家争鳴でありいまだ合意形成をみない。これは、そもそもデフレの原因について大きな認識差異があることが原因であろう。そこで、まずデフレの原因について検証し、その後、提言を行いたい。


価格形成のメカニズムに対する論争は古くて新しい。最も標準的で強力な仮説は貨幣数量説である。単純化すれば「価格」は「貨幣量」を「世の中のモノ・サービスの量」で割ることにきまる。後者の変動を仮に一定とすれば、貨幣量の変動に価格も連動する。デフレは貨幣量が不足している状況である。実際に、金貨や銀貨が貨幣の時代はデフレが珍しくなかったが、それは金や銀の産出量によって貨幣量が決まり、改鋳などの手段は手間も時間もかかったからである。この立場にたてば、デフレの解決策は単純明快、「お金を刷る」ことである。もちろん現実には日銀がお金を配るわけではないから、まず銀行が持っている国債を買い付けて、銀行の日銀口座にお金をいれる。銀行に貸し出し先がなくて市中にお金がいかないなら、いっそ社債を買え、株を買え、という方向に発展していく。つまりデフレは日銀の怠慢に他ならない、ということになる。

方や「モノやサービスに対する需給バランス」に注目する立場もある。つまり「貨幣量」は「モノ・サービスの需要」に連動して決まるものであり、独立変数ではない。デフレになっているのはなぜか?モノやサービスを欲しいという人がいないからである。需要がなければ売る側としては価格を下げざるを得ない、これがデフレである。この立場に立てば、日銀がいくらお金を刷っても無駄である。そもそも、世の中でモノが売れなければ、お金が回転するはずがない。銀行や企業の口座にお金が溜まっていくだけで、世の中はあいも変らずデフレである。

いったいどちらが正しいのであろうか?混乱させるようで恐縮だが、答えはどちらも正しい。通貨量とインフレには長期的には高い相関があり、日銀がお金を供給し続ければいつか必ず物価は反転する。しかし日銀の2000年代前半の量的緩和がそれほど物価を押し上げなかったように、短期的に経済が収縮している場合には、それほど効果はない。

ということで、やれることはできるだけやったほうがいいというのが私の結論だ。それほど効果は望めないかもしれないが、日銀も積極的な量的緩和に踏み切るべきだし、政府や経済界も構造改革を進めて新規の需要を掘り起こす必要がある。分かりやすい例でいえば、JALのような会社がより効率的になり、航空運賃が下がれば需要が生まれるし、余剰の可処分所得が他のモノ・サービスの購入に向けられる。TPPに加盟して海外での需要が発生すれば、当然貨幣需要もあがって価格も上昇していくだろう。当然私がより重要視すべきと考えるのは、後者である。

最後に私が強調したいのは、今日本がかかえるデフレの問題は重層的で複雑なものである、ということだ。インフレターゲットを導入すればそれで解決するような話ではないし、日銀の怠慢のせいだけでもない。恐らくこの問題の解決には政府、経済界含めて大変な努力が必要だし、時間もかかるだろう。しかし、解決不可能な問題では決してない。
(根津修二 ロンドンビジネススクールMBA課程履修中 Twitter:@snezu)

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