簡単に論破できる電波オークション反対論

2010年12月06日 13:56

ワイヤレスブロードバンド実現に向けた周波数再編アクションプランを検討していた総務省・ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループが報告書を取りまとめた。この報告書について、海部美知さん池田信夫さんの評論がすでにアゴラに掲載されている。

二人の意見は、ガラパゴス的な周波数配分方針を撤回したことは評価されるが電波オークションについてネガティブだったのは大問題という点で、一致している。私もまったく同じ意見である。電波オークションには移動通信事業者からの反対が強いために慎重に議論していく必要がある、というのが報告書のスタンスだが、移動通信事業者があげた反対理由はいずれも簡単に論破できる。

「落札額の高騰を招く可能性があり、サービスの高度化の遅れ、ユーザ負担の増加を引き起こす懸念があるため、慎重な議論が必要」というのが、移動通信事業者が挙げる第一の理由である。


1994年以来2009年末までに、海外では電波オークションが計67回実施されている。このうち55回については落札額が公開あるいは報道されているため、落札額の高騰が本当に起きたかどうか検証が可能である。詳細な分析は鬼木甫氏のサイトを見てほしいが、高騰したのは2000年のドイツとイギリス、2009年のバーレーンのわずか3回に過ぎないことがわかる。鬼木氏はわが国における落札額の推計をしているが、700MHz帯の60MHzをオークションにかけた場合、最大で1.3兆円と見積もられるという。とても高騰というような金額にはならないのである。

そもそも入札するのは移動通信事業者自身である。移動通信事業者はどのようなサービスを提供し、またどの程度ユーザ負担を求めるかを考えて、入札するに違いない。電波を確保したいだけならいくら高値を付けても構わないが、それでは経営が成り立たないことは最初からわかっている。電波は利用して初めて価値が生まれる、ということを頭に入れて入札すれば、高騰は起きないのである。第一の理由を声高に言う移動通信事業者は、自ら経営者失格と宣言しているようなものだ。

第二の理由は「資金力のある事業者が落札する可能性が高く、新規参入による競争促進と整合性がない」である。これは実施方法次第で解決できる問題だ。サービスエリアを東日本と西日本に分けて、どちらか一方への入札しか認めないという条件を付けてもよい。今回は新規事業者しか入札できない、というオークションを実施してもよい。どれか一つしか落札できないという条件を付けて、二つか三つの電波スロットを同時にオークションにかけてもよい。

第三は「オークション落札額は、最終的にはサービス提供料金に反映されることから、国民の十分な理解を得るべき」である。移動通信事業者が値付けする際には代替サービスとの競合を考慮に入れる必要がある。すでに3Gや公衆WiFi、WiMAXがサービスされ、さらにはLTEまでもが提供されようとしている状況で、勝手に提供料金を決めてもユーザを集められるはずはない。免許を得るために資金を必要したからと、むやみにそれをサービス提供料金に転嫁することは、そもそもできないのである。

オークション落札額は国庫に入り、慢性的な財政赤字下では貴重な収入になる。鬼木氏は1.3兆円との推計をしたが、今回、ワーキンググループが取り上げた帯域全体では、さらにその2倍程度の収入が期待できる。地上波デジタル放送のホワイトスペースも電波オークションにかければ、さらに0.6兆円が得られるだろう。このように、この数年間だけでも電波オークションで5兆円程度の国庫収入が見込め、その分、財政赤字が削減されることに国民は大きな支持を送るだろう。

第四の理由は「電波利用料の目的・性格を明確にした上で、現行の電波制度/電波利用料制度との整合性を図ることが必要」である。電波オークションに金を出したのに電波利用料まで取られてはかなわない、ということだ。電波オークションを実施した帯域では利用料を徴収すべきではない、という点で私も移動通信事業者に同調する。減額分は電波オークション収入から一般財源として手当てすれば済む話であって、これをことさら反対理由とするべきではない。

以上に説明してきたように、電波オークション反対論は簡単に論破できる。すでに世界の40カ国以上で実施されている電波オークションの本格導入に向けて、総務省は早急に検討を開始すべきである。ワーキンググループは、その報告の際、電波オークション制度の導入には法律改正が必要で時間がかかる、と強調した。しかし、放送と通信の融合をいっそう促進するための情報通信法の準備を実質二年で仕上げた有能な総務省官僚なら、電波法の改正もあっという間に済ませられるだろう。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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