共通番号を歓迎するが、課題はもっと大きい

2010年12月07日 00:01

懸案だった社会保障や税の共通番号制度がやっと進み始めたようだ。新聞各紙は、共通番号の導入で与野党4党が一致したという趣旨の記事(たとえば東京新聞)を一斉に掲載している。「わたしたち生活者のための『共通番号』推進協議会」(代表・北川正恭早大教授)が主催したシンポジウムが12月5日に開催され、出席した民主・自民・公明・みんなの四党幹部が制度導入を目指す方向で一致したそうである。

電子行政の推進に不可欠な共通番号について制度化に動き出したのは歓迎すべきである。しかし、共通番号が実現しても、それだけでは電子行政は進展しない、ということにも注意を払う必要がある。つまり共通番号は必要条件だが、十分条件ではないのである。


今まで政府各府省・地方公共団体は自ら所管する業務の電子化を進めてきた。電子申請できない申請は残りわずかになっており、一方、各府省・地方公共団体からのウェブサイトを通じた情報提供も充実してきた。しかし、国民には電子行政が進捗しているとの実感がない。その理由は、まさに自ら所管する業務の電子化だけを進めてきたことにある。今までの紙を電子に置き換えよう、という意思はあったが、電子ならではの特徴を利用して新しい行政サービスを提供しよう、という意欲はだれも持っていなかったのである。

典型例が、住民票等がコンビニで受領できるようなった、というサービスである。このサービスは2010年2月から、東京都渋谷区、三鷹市、千葉県市川市で試験的に開始され、5月から全国展開が進められてきている。一見便利なサービスだが、先行した市川市では、利用率は1パーセントにとどまっているという。

なぜ1パーセントなのだろうか。それは、役所だけでの交付にコンビニ交付を加えるのは一見前進だが、所詮出向かなければならないので特に利用しようという気持ちにならないからだ。

情報化に期待できる利益は二種類で、経費の節減と新しい価値の創造である。役所まで出向く面倒がコンビニで済むのは経費の節減に相当するが、新しい価値の創造はない。抜本的に改善し新しい価値を生むには、住民票の大半は公的申請での本人確認に利用されているということに着目して、申請を受けた際、住基ネットで確認する等、行政機関間での情報連携を行って、交付を不要にすることだったのだ。今までの紙を電子に置き換えるだけではなく、電子ならではの特徴を利用して新しい行政サービスを提供する必要があったのだ。

電子をフルに利用した新しい行政を実現するには、さまざまな制度改革が必要である。共通番号はその一要素に過ぎない。電子政府基本法の制定、政府CIOの任命など、ほかにも課題は多い。これらについて議論するために、情報通信政策フォーラム電子行政研究会では第1回セミナーを開催する。まだ余席があるようなので、参加いただけると幸いである。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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