電子書籍市場に感じる違和感

山田 肇

情報通信政策フォーラム(ICPF)では秋のセミナーシリーズのテーマを電子書籍に定め、すでに二回のセミナーを開催している。第1回セミナーには総務省の安藤課長と文化庁の川瀬室長にお越しいただいた。総務省・文部科学省・経済産業省の三省が共同で組織した「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の促進に関する懇談会」の報告書について説明してもらい、そのうえで、各省の取り組みについて話を聞いた。

著作物・出版物の権利処理と契約の円滑化や電子出版日本語フォーマットの統一化・国際標準化などといった施策を推進していることはよくわかったが、業界総ぐるみの匂いが強く、違和感が残った。三省懇談会は副大臣と大臣政務官が主催し、作家・出版社・新聞社・印刷会社・書店・通信事業者・メーカーなどが参加したものである。このため、結論には誰もが同意でき無難なことだけが書かれているが、参加者たちはその実行に責任を負っているわけではない。

そんな懇談会を開いている間に、関連業界はそれぞれの利害で分裂し始めた。第2回セミナーで講演した三瓶氏(日本電子出版協会事務局長)によると、コンテンツ系の団体だけでも、日本書籍出版協会・日本電子出版協会・日本電子書籍出版社協会・電子書籍を考える出版社の会・電子出版制作流通協議会・デジタル教科書教材協議会と、さまざまなものが存在するという。


電子書籍端末でも同様で、先行したソニーやシャープのほかに、KDDIも専用端末の発売についてプレスリリースしたし、パナソニックなどにも参入の計画があるとの報道が流れている。

電子書籍の市場はゲーム機の市場によく似ている。ある端末が売れると、それで読むことができるコンテンツが充実しはじめ、コンテンツが充実していくと端末が売れる、という好循環が回り出す。端末が売れなければコンテンツがそろわず、コンテンツがなければ端末が売れないという悪循環が起きれば、市場では敗者になる。

ゲーム機の市場ですでに20年以上も続くこのメカニズムに学んだならば、コンテンツ側も端末側も、分裂を避けるように動いたはずだ。なぜ、今のような状況になっているのだろうか。このままではわが国に電子書籍の市場は育たないのだろうか。それとも、AmazonやGoogleに席巻されてしまうのだろうか。

そんな中で一部の出版社は電子書籍を前向きにとらえ、市場化に動き出している。その一例がポット出版である。ポット出版では2010年1月からすべての新刊を書籍版と.book形式の電子版で発売し始めた。そこで、第3回セミナー(1月14日)にはポット出版の沢辺均代表をお招きし、「電子書籍をめぐる動向 積極的な出版社はどう考えているか」と題して講演していただくことにした。まだ余席があるようなので、ぜひ参加していただきたい。

山田肇 - 東洋大学経済学部