効率的な土地への若者の移住推進を議論すべき ‐ 笹生朋樹アイザック

2011年01月10日 11:00

労働生産性という言葉は、一人歩きしやすい為取り扱いに注意が必要だ。良いPCを職場で貸与される事が労働生産性向上につながると言う人もいれば、経営者の中にはサービス残業を奨励する理由として「労働生産性」という言葉を使うタイプの経営者もいるかもしれない。何れにせよ、労働生産性の向上と一口に言ってもその中身には議論が必要で、もしかしたら人口減少時代にあってその議論をしている猶予はもう無いのかもしれない。


そこで私は、議論をクリアカットにする意味でも、ともすればタブーともなるかもしれない「国土全体での人口の最適配分」を議論することを提案したい。

何が労働生産性の向上につながるのかの完全な明示はまだ途上かもしれないが、少なくとも事業を営む土地によって効率が違う事は統計を引かなくても生活の現場に身をおく方なら誰でも実感として持っているのではないのだろうか。

したがって、この肌感覚から出発すれば少ない人口で生産性をあげる施策は実に簡単で、「国土の均衡ある発展」を捨て、効率の良い土地に資本と生産人口を集めて、生産適応年齢を過ぎた人口はそうでない土地に移動させればいい。

とこのように議論を出発させようとすると暴論の謗りを免れない。

国民は居住する場所の自由を憲法22条で保障されており、「君のような人間はここにいると効率を下げるので引っ越したまえ」という思想は全体主義に容易につながる。

しかし本当にそうだろうか。憲法に逆らうような議論をしてはいけないという思想も十分に全体主義的なのだから、国民の最大幸福を追求する為の憲法改正議論は存在を許されるはず。

例えばテクニカルな方法論として、強制移住や居住規制を行う事は論外かもしれないが、都市圏では若者を税制優遇し、地方では逆をやる、というようなインセンティブベースの政策ならば必ずしも暴論にはならない。

むしろ、現状でも土地によって政府の支援が厚かったりそうでない土地がでているのも広義の居住移転差別と言えよう。

人口移動推奨政策を現場での事例に引き寄せて例示を一つする。地方移住を奨励する年齢を例えば50歳前後にすることによって、いわゆる都市圏の企業でのソリティア社員/企業内失業者の問題解決の一助にもなる面があると想像できる。

生産性がさがる年齢から都市圏での生活を維持するコストが税金の面で跳ね上がるならば、早期退職と移住のインセンティブが働き、結果的には若者へ雇用の椅子が増える。

制度の組み立て方次第では、生産適応年齢をこえていても、都市に残って自分たちの孫の育児や地域支援に奉仕する年配者は税制面でも優遇が受けられるなどすれば、生産とは別な面で社会保障のサービス拡充が期待できる。

もちろん、後期高齢者医療制度の時にもあった「老人を地方に姥捨てる政策!」という反論が当然出てくるはずだが、”少ない年金”でやりくりする必要のある諸先輩方をコストの割高な都市圏に縛り付けておく方が私は姥捨てだと考える。

地方によっては生産拠点であることをやめ、そのリソースをリタイアメントライフに特化した街づくりへの施策に振り向ける事で結果的には高齢者への十分なサービスが提供できるという想定も可能だ。

ただ、人間の理性が「効率的な土地」と「そうでない土地」を判断できるのかという疑問は残る、実際にこの方針を導入する際には、どの県が生産用の土地となりどの県がリタイア用の土地となるかについては、ひどく醜い争いを鑑賞できる事になろう。

人口減少の時代に際して、「産む産まぬ」「結婚するしない」を政府主導によるインセンティブのばら撒きで対応するならば、住む土地についてもそれをやってもらえまいか。 というのが私の考えである。
(笹生朋樹アイザック 会社員)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑