財政問題=もはや政治問題:国債格下げの理由

2011年02月01日 08:00

衆院と参院で与野党が逆転する「ねじれ国会」。混迷する政治は今、急激に進む少子高齢化によって膨張する社会保障予算(年金・医療・介護)と、それにより悪化する財政を前に適切な対応ができない状況を露呈している。与党は参院で過半数を占めていないが、参院の第1党は民主党である。このため、仮に解散・総選挙で野党が勝利しても、次の参院選のある2013年夏まで「ねじれ」が解消される見込みは薄い。


もし本当に各党が危機感をもち、日本の将来を「憂う」ならば、かつて与党であった自民党や公明党なども批判のみでなく、本来は一致協力して解決に立ち向かう動きがあってもよいはずだ。だが、むしろ政局優先の形で与野党の駆け引きは続く…。その結果、財政再建、税と社会保障の抜本改革の行く末に「暗雲」が漂いはじめている。このままでは、政治的脳死状態に陥ってしまうリスクが高い。

図表:S&Pの日本国債格付けの推移
国債格付け

そのような中、1月27日、アメリカの格付け会社S&P(スタンダード&プアーズ)は、日本の国債格付けを「AA」から「AA-」に引き下げた(「AA-」の格付けは2002年以来)。格下げの理由は、日本の公債残高(対GDP)は先進国で最悪で、消費増税を含む大幅な財政再建を実施しない限り、2020年までに基礎的財政収支の均衡達成は不可能であることであるが、本質的な原因は「政治」にある。

実際、S&Pのアジア国債担当者は日本経済新聞のインタビューで以下のように回答している(日経新聞2011年1月30日朝刊)

「政府の2011年度予算案がまとまり、内閣府の中長期試算も出た。なぜ政府が社会保障と税制の一体改革案をまとめる6月まで待たなかったのかという声を聞く。いくらいい改革案をつくっても法律にして国会を通せる可能性は非常に小さいというのが正直な実感だ。一体改革を実現できるという確証が出てくれば評価するが、アイデアだけなら誰でも出せる。問題は政治が実行に移せるかだ

(中略) ずるずると債務残高が積み上がり、マクロ経済もパッとしないとなると、もう一回(格下げを)検討せざるを得ないリスクはある。上にいくシナリオは、何らかの形で税制や年金制度改革で政治的な妥協が図られる場合だ。日本の社会保障制度は高度成長や人口増を前提にしたモデル。このあたりでガラガラポン(大改革)すべきだ」

以上の回答には全く同感であり、今回のS&Pによる格下げの本質は、与野党の政治的駆け引きが続く「ねじれ国会」で、財政・社会保障の将来像を描くことができない日本政治の現状そのものに対する警告と判断できよう。つまり、財政問題は、もはや政治問題なのである。

しかし、拙書「2020年、日本が破綻する日」(日経プレミアシリーズ)で指摘したように、もはや財政に残された時間は少ない。また、前回のコラム「膨らむ政府債務、金利低下ボーナスの終焉か」で指摘したように、すでに政府債務の利払費(23年度は約10兆円)は上昇しつつあり、これからは利払費は増加していくのは確実に近い。いまは1.4%台で金利が安定しているが、金利が上昇しはじめてからでは手遅れである。

この状況を脱却できるのは政治しかない。批判は簡単だが、何事も実行するのは難しい。政治主導というなら、超党派でも政界再編・大連立でも何でも構わない。前向きに物事を変えていく努力が重要だ。いまこそ、政局に走ることなく、与野党が将来を見据えつつ、「言論の府」たる国会に相応しい形で建設的な議論を行い、この難局を乗り越えてほしい。

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