ネットが促す引越しサービスの進化

2011年01月31日 14:00

引越しのシーズンとなってきました。しかし引越しサービス業をめぐる経営環境は決していいとはいえません。住宅が建たない、労働人口も減少に転じ、各企業の経費節減によって転勤も減少し、市場そのものが縮小しはじめてきているところに、ネットで各社サービスの満足度の比較や利用者の声が掲載され、また一括見積りの依頼ができるようになって引越しサービスの競争が激しくなってきています。


住宅市場で気になるのは、着工件数の動向です。官製不況そのものともいえる平成19年の改正建築基準法施行に伴う着工減、さらにリーマンショックによる景気低迷によって、かろうじて保っていた100万戸を多く割って、平成21年には、79万戸となってしまったのが実態です。

住宅着工統計

中古住宅も東京以外では塩漬け状態だといいます。賃貸住宅の契約数も首都圏や中部では回復してきているそうですが、その他の地域ではむしろ空室が目立ち始めています。

当然、引越しサービス業の競争が激化してくるわけです。さらに、ネットでの引越しサービスの比較サイトが登場してきました。サービスの品質が依頼時にはわからないので、どの会社に依頼するかは、それぞれの企業の顧客満足度が大きく影響してくることは言うまでもありません。

さらに、かつてなら、電話帳で調べて近くの会社か、知名度のある会社に依頼することが普通で、相見積もりを取ったとしても、その数はしれていたのが、今では3社とか、4社の相見積もりを取るのも普通になってきています。

ネットが、顧客満足度というサービスの品質競争を促し、さらに価格競争を促すという現象です。なにか今日のビジネス環境を象徴するような業界ですが、この業界が大変なのは、決定的なリーダー企業が存在しないことです。

直近では、トップの日本通運の売上高が589億円、クロネコヤマトのホームコンビニエンス事業の売上高が489億円、アートコーポレーションが448億円、サカイ引越センターが438億円と拮抗しており、さらにハトのマークの全国引越専門協同組合連合会が300億円、アリさんマークの引越社が272億円と、価格競争が起こりやすい群雄割拠の業界構造となっています。

顧客満足度を上げようとすると、従業員教育や従業員の満足度が求められ、コストが上がり、価格を下げようとすると、コストの大半が人件費であるために、作業の効率化の工夫が求められます。

サイトによっては、100社一括見積りをうたっていることろもありますが、おそらく淘汰と集約化が起こってきているのではないでしょうか。

主婦目線が売りであったアートコーポレーションが家具販売などの物販事業でクロスセリングを行い、話題になったことがありましたが、売上げに寄与しているかどうかは疑問です。

梱包資材やトラックの改良なども、各社ともに競っているようですが、そろそろビジネスの仕組みでのイノベーションによって、競争から一歩抜け出せるのか、このまま過当競争の結果、収益を落とすかの岐路に立ってきていることは間違いないと思います。もし、競争優位の仕組みができれば、引越しサービスの海外展開も夢ではないのではないのかもしれません。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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