簡単に論破できる電波オークション反対論 パート6

2011年02月14日 14:30

簡単に論破できる電波オークション反対論』と題する記事を連載してきたが、依然として「落札額の高騰は通信事業者の経営を悪化させる」「落札額の消費者への転嫁が心配」「電波オークションがないので日本のサービスはレベルが高い」といった意見をいただく。

今日は、「落札額の高騰は荒唐無稽」であることを改めて説明しよう。


「落札額の高騰は通信事業者の経営を悪化させる」と「落札額の消費者への転嫁が心配」は相反し、両方を同時に主張すると論理矛盾になると、まず気付くべきである。落札額が高騰しても消費者に転嫁できれば通信事業者の経営は悪化しない。消費者に転嫁できない場合には経営が悪化するかもしれない。このどちらか一方だけの主張なら論理的だが、同時には成立しない二つを平気で主張する人がいるのは考えものだ。

グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォースの中に設置されたワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループの『とりまとめ』に書かれている移動通信事業者の意見は、まさにその種のものである。

落札額の消費者への転嫁が成功するか失敗するかの決定権は、実は消費者が持つ。消費者一人ひとりは、多種多様な通信手段の中から、その人にとってもっとも合理的と思われる手段を選択する。新しい無線サービスが画期的なら多少高額でも受け入れるかもしれないが、それにも限界がある。NTTの場合、1.5メガのADSLの月料金が2730円(電話共用型)なのに、それより圧倒的に速い光フレッツの月料金はなぜ(たったの)4305円なのか。それは、光だからと高い料金を課したら加入者が集まらないからだ。無線サービスでも同様で、消費者はPHS、3G、LTE、WiMAX、WiFiなどから自由に選択できる状況にある。そんな状況で落札額を消費者に転嫁しようとするのは、経営的な自殺行為である。

落札額は消費者に転嫁できない、ということを前提に移動通信事業者は電波オークションに臨まざるをえない。それでも高騰したとしたら、それは経営者が判断を間違ったからだ。競争相手にババをつかませることもオークション参加者の戦術の一つであるから、それにだまされたのかもしれない。

そのような経営者は追放すればよい。実際、イギリスのボーダフォンは、同国での3Gオークションが2000年に高騰したのち、2003年に社長が交代している。その後、同社は一部事業の売却(日本事業のソフトバンクへの売却など)と各国での事業買収を同時並行で進め、優良企業として成長していった。

イギリスとドイツでの高騰は経営陣へのよい教訓となっている。このため、その後の電波オークションでは、高騰という事態は起きていない。また落札額を消費者に転嫁できないことも、総務省が行った『電気通信サービスに係る内外価格差調査』によって明らかになっている。

「電波オークションがないので日本のサービスはレベルが高い」という意見が仮に事実だとしても、電波オークションが導入されたのち、無線サービスの品質を落とすことは可能だろうか。既に書いたように、消費者はPHS、3G、LTE、WiMAX、WiFiなどから自由に選択できるので、サービス品質を悪くするのも自殺行為である。サービス品質への投資も勘案して入札するのが、正しい経営である。

ここまで説明してきたように、反対のための反対論しか出せないというのが、オークション反対派の実態なのである。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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