夏に向けた電力確保と避けられない電力自由化

2011年03月30日 13:28

原発事故は一進一退ですが、既に海外の工場でも日本からの部品が止まっている状況です。今後は復興が極めて重要ですが、猫の目のように変わる計画停電は、ラインが組めない/起動や準備に時間がかかるため動向が読みにくく、なにより経営者・現場共にモチベーションが低下する課題を抱えています。また今後、工場がフル稼動した際の電力不足や電力消費の大きい夏に向けた対策は、企業規模の大小を問わず大きな課題となっています。


サマータイムや省エネなどミクロ面が取り上げられ、本質が見えにくくなっていますので、マクロ面の電力供給といった全体的なポイントを注視する必要があります。

1)電力需給の背景
アゴラ-4

出所)http://www.tepco.co.jp/cc/press/11032506-j.html

2)電力の特徴
・基本的に溜めることが出来ない。
・基礎的需要と急激に増える需要で、エネルギー源を使い分ける必要がある。
・遠距離だと送電ロスが大きく、大消費地に近い必要。
・電力需要は、家庭/企業/工場で約1/3ずつのため、特定分野だけの対策が難しい。

3)主な方策
1)一般企業による卸電力供給強化(IPP)→企業が自家使用のため、または電力会社への卸販売を行っている電力供給を強化していきます。既に住友金属鹿島火力発電所では発電再開していますが、こうした卸電力は2007年で239万KWを東京電力が購入しています。
2)ガスタービン発電の稼動(1基あたり約30万KW)→本来は船舶などのエンジンですが、ガスタービン発電による供給強化があります。発電量は少ないですが設置期間が短いことから、発電所に併設するだけでなく、一般企業でも工場設置を計画しており、時間帯によって生じた余剰電力の卸もしくは販売も見込まれます。
3)隣接する地域電力会社からの買取→既に変電所の強化を図っていますが、隣接する地域電力会社から供給する方法です。
4)清掃工場など売電強化(数千KW単位)→既に行っていますが、清掃工場などで回っている蒸気タービン発電供給を増やします。
5)需給調整契約の拡大→大口需要者では電力需要の逼迫時に利用削減義務を負う代わり、割引料金適用となりますが、これを拡大する方法です。
6)電力使用の総量規制→オイルショックの時代に、一定規模の事業者は電力需要ピーク時に電力使用量を制限した経緯がありますが、総量規制として使用を制限する方法です。

また電力需要は来年の夏にも厳しくなることが予想されますので、中長期的には
7)再生可能エネルギーの買取強化(太陽光発電の余剰電力買取)→エネルギー量は小さいですが、自然エネルギーの啓蒙普及に貢献します。
8)火力発電の多様化→火力発電は資源調達リスクがありますので、石油だけでなく、石炭/天然ガスへの対応が欠かせません。
9)電力消費型産業の地方・海外シフト→産業政策の色合いが強くなりますが、例えばアルミ精錬や製紙など電力を多く消費する産業は、地方や海外にシフトせざるを得ない状況になるでしょう。

確定的なのは戦後の電力不足の中で、電力供給は地域独占が望ましいとされてきましたが、90年代から始まった電力自由化の流れによって、民間事業者の東京電力への卸売や隣接する電力会社からの供給が恒常的になることは避けられません。本来は、電柱や電線が2つあるのは社会的なロスが大きいため地域独占が是とされてきましたが、今後は企業の発電所や他の地域電力会社に隣接する地域などでは、結果としての自由化は避けられないでしょう。

石川 貴善(アゴラ執筆メンバー)
ブログ http://itsolution01.blog34.fc2.com/ Twitter @ishikawa_taka

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