避難から復興へ-係留フェリーと保養地の活用を!

2011年03月31日 10:00

福島原発事故の深刻化と共に、マスコミ報道は放射線問題一色となり、津波被災が陰に隠れた印象があります。それにも拘らず、現場では復興に向って必死の努力が続いているに違いありません。


住民台帳などの住民情報が散逸してしまった今回の惨事では、ロジスティックスが事の他重要で、被災者が分散していたのでは、学校とか役所の様な、元々住居と近いことを前提に作られた村落社会を維持する事は困難です。

その意味から、地方自治体やボランテイアー団体が中心となって知恵を集め、集団疎開先やホームステイ先の確保など家族分離を防ぐ工夫がされている事は誠に心強い限りです。

それにしては、被災者の精神的負担を一番軽く出来そうな国民宿舎、簡保の宿、公務員共済組合保養地、休暇村などの利用が話題に乗らないのは不思議です。大惨事の地元である東北地方は温泉や風光にも恵まれ、多くの「半公共保養施設」があります。これら施設の利用率が下がった今日こそ、惨事の救済に向けた新たな活用法を真剣に検討すべきです。

避難所探しと共に重要なのが、一刻も早い復興です。復興には瓦礫の撤去、堤防や港湾、道路などのインフラの復旧、沈下した土地の排水、農作地の塩害をはじめとする土壌検査など、多数の現場作業員を必要とする大工事で、大規模な工事飯場や工事事務所の設置は必須条件です。

従来の災害復興手順は、先ず仮設住宅が出来るまでの短期間は避難場所で共同生活をしながら仮設住宅の完成を待ち、自宅と被災地の復元を待って帰宅すると言うステップでした。然し、今回の災害は復興に必要な殆どのインフラが破壊され、作業員を確保出来る人口密集地から程遠いと言う特徴があり、この手順通りの復興作業は不可能です。

一方、幸か不幸か今回の被災地の大半は海辺にあり、その多くが船舶が停泊できる港湾施設を持っています。中には被災者の日常品や復興資材の荷揚げ港として急ピッチに整備されている港湾も多く、その多くが可也の大型船舶の停泊も可能な港湾です

海洋国家の日本には、1万トン級の「クルーズフェリー飛龍」 や「ナッチャンWorld」など係船中のフェリーは20隻以上もあります。その他運休中の国内航路の旅客船などを入れると動員可能な船舶は相当数に昇り、これ等の船舶に、簡易ベッドの取り付け、風呂、トイレ、料理場などの改造を加えるだけで、現場事務所、飯場、ボランテイアーの受け入れ施設として簡単に転用できる利点があります。これを活用しない手はありません。

衛生面や生活の快適性、節電やロジステイックスにも大きな利便性があり、住居、学校、介護施設、医務所、給食施設などの複合施設への転換が比較的容易なフェリー等の活用は、コミュニテイーの規模によっては、問題になっている集落や学校群ごとの避難生活も可能になります。一刻も早い復興を願う被災者の為にも、政府は必要な数の運休船舶を早急に借り上げるべきです。

行方不明者の数が異常に多いのも今回の惨事の特徴で、行方不明者の捜索や思い出の残る記念品を探したい被災者の気持ちを考えると、避難所が被災地に出来るだけ近い事が望まれます。その点からも、東北地方に散在する半公共施設を避難所として活用し、フェリーなどの船舶を飯場や工事事務所、ボランテイアーの生活基盤として利用する事で、避難住民が週日はフェリーの飯場に寝泊りして復興工事に携わり、週末には避難所に戻る事も可能です。

故郷の復興に従事することで、ある程度の収入は確保され、情熱を傾けて故郷の復興に参加できる事も無視出来ない利点です。利点はそれだけでは有りません。自分の集落の復興に従事する事は、私有財産の援助になるとして被災者生活再建支援法 で禁止されている住宅再建支援にも触れず、被災者の自宅の復旧を間接的に支援する一石二鳥の効果も期待できます。

復興といえば、関東大震災の復興計画の中心人物は、今回大惨事を受けた岩手県出身の後藤新平氏でした。計画の規模の大きさから「大風呂敷」とあだ名された同氏の震災復興計画は、13億円という当時の国家予算の約1年分と言う大規模なものでした。結果として大幅に縮小されましたが、その未来志向は今回の復興でも多いに参照すべきでしょう。

後藤流の未来的な街作りを可能にする為には、「激甚災害法」や私有財産の処理に関する多くの現行法の改正など目に見えないインフラ構築も必要で、残された課題は被災地の瓦礫の様に山積みです。利用できる物は全て利用して復興を急ぐべきで、時間の無駄は許されません。

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