震災を乗り越え、電力の自由化を実現できるか -米崎義明

アゴラ編集部

福島原子力発電の事後処理が、議論として巻き起こっている中、原子力発電が淘汰され、再生可能エネルギーを推進する世論の流れになるのは、ほぼ間違いないだろう。
なぜ、今の今まで、国及び電力会社は原子力を推し進め、再生可能エネルギーを推進してこなかったのか。

中国電力は、山口県上関町に上関原子力発電所の建設を計画している。漁協をはじめとする反対派住民や全国から集まった若者らは、海上にカヌーや漁船を出すなど抗議活動を行い、工事を強行する中国電力の職員らと衝突、けが人も出た。
カヤック隊として上関の海を守っている若者が、中国電力に裁判を起こされ、作業 遅延を理由に、4人の個人に対して4800万円の支払いを求められている。こういった裁判をSLAPP裁判という。

そもそも中国電力は「電力余り」で関西電力などに余剰電力を買い取ってもらっている状態だ。中国電力は電力需要量は増えるという計画を根拠に、原発建設が必要と説明しているが、実際には販売電力の実績は年々減っている。

中国電力がこのような非合理な経営をできるのは、電力会社が市場を地域独占しているからに他ならない。中国電力は他社に比べて石炭による発電の割合が高く、 CO2排出量が他の電力会社に比べて高い。その排出量を他社と横並びに合わせるため原発を建設し、母数を増やすという、馬鹿げた論理である。

原子力の推進する理由として、エネルギーの安定供給性,環境保全,経済性の3つを上げている。しかし、原子力は巨大な設備投資をして、長期的な回収期間で安定的に回収していかなければならず、原子力によって独占市場を正当化するという、いかにもふざけた回路がある。つまり、電力会社は地域独占を守り、官僚の天下り先の確保のために原子力発電を推進している。TV局は電力が大口スポンサーシップのため、世論を盛り上げることができない。
民主党政権は「2020年までにCO2を25%削減」、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入を09年マニフェスト掲げたが、経産大臣に適任者を登用できず、完全に失敗に終わった。

しかし、福島第一原発の事件により、今後の展開はわからなくなった。東電は、損害賠償を払いきれない場合もあり、国内の各電力会社で分担しなければならない可能性がある。
また、自然エネルギーの設備投資することになると特定の地域から分配しなければならなくなり、横串の送電線を作らなければならなくなる。今こそ、官僚の肥大化に伴う地域独占性を廃止し、自由化に突き進むべき時ではないだろうか。
(米崎義明  charity japan)

コメント

  1. kokusa より:

    中国電力が原子力発電を増やそうとしているのは、10電力の中で最もCO2の排出原単位が高い会社のひとつだからです。つまり、化石燃料への依存率が高く、温暖化対策が最も遅れているということで、「馬鹿げた」論理でもなんでもないと思います。地域独占とは何の関係もありません。
    独占かつ大企業だから横暴に見える、ということでしょうが、電力自由化はすでに行われており、発電事業への参加も可能で電力取引所も開設されています。中国地方の工場は中国電力から買わなくても全国どこの電力会社からでも購入できます。
    東電などは解体の話も出ていますが、別に政府が株式を持っているわけでもない、れっきとした上場企業を株主の意思も確認せずに勝手にどうしようというのでしょうか。
    大企業と官僚が黒い関係でつながり、善意ある人々の願いを抑圧しているという構図は、勧善懲悪の大衆劇として、耳に入りやすい言説ですが、問題のとらえ方が一面的すぎると思います。

  2. kiokada より:

    自然エネルギーが推進されていくかどうかわからない。エネルギー政策は合理的な判断のもと行われるべきだと思う。

    ただし上関原発の建設は現状のままなら白紙に戻してほしいと思う。工事を進めるのならきちんと地元の賛成を得てからにすべきだ。

    中国電力は今回の事故をうけSLAPP訴訟は取り下げたし、工事は停止中だ。しかし地元への説明を行って工事を進める姿勢はくずしていない。

  3. ケット より:

    その議論の前提として検証すべき問題、
    「再生可能エネルギーは使えるのか」があります。
    これすら合意できていない状態では、何をしたところで結局は「より多くの金と宣伝手段と権威を持つものが正しい」ことになるでしょう。

  4. u3euro より:

    もっと落ち着いて論じましょう。

    「ふざけた」とか言葉には気をつけてください。ここはスポーツ誌ではありません。

    昼間のワイドショーならアンチ原発を書けば、良いでしょう。。力会社の戦略には私欲だけで成り立ってるわけではないでしょう。

    しかし、アゴラの住人はそれでは納得しませんよ。(むしろアゴラ住人なら原発推進派が主流でしょう)

    論じられるべきは、アンチ原発よりGENMAPTUS2.0ではないでしょうか?

  5. igelgeist より:

    @1. kokusa
    “東電などは解体の話も出ていますが、別に政府が株式を持っているわけでもない、れっきとした上場企業を株主の意思も確認せずに勝手にどうしようというのでしょうか。”

    東電が全ての賠償を支払う能力がないなら、被災者が提訴した裁判で東電の財産が没収されればいいということが最も合理的にみえる - - - それによって、東電の株を買った(よって間接的に原発を支持した)株主の愚考・愚行が見事に罰せられ、立派なみせしめにもなれる・・・

  6. sfdx より:

    > また、自然エネルギーの設備投資することになると特定の地域から分配しな
    > ければならなくなり、横串の送電線を作らなければならなくなる。

    意味がわかりません. 米崎さんは何の自然エネルギーを想定し, どのような問題が生じると考えているのでしょうか?

  7. ksmo2011 より:

    先ず、再生可能エネルギーという幻想を捨てて下さい。
    太陽光発電、先ず無理です。だってそうでしょう。雨が降れば、発電量ゼロです。つまり、発電量に全く等価な予備電力を持たなければならない。それはどこから供給しますか。
    風力、此も同じですね。風が止まれば,風力ゼロです。台風が来れば、風車は止めなければ壊れます。此は,地域一定の停電を意味します。此も,100%のバックアップが必要です。で、台風が来れば,天気も悪くて、太陽光発電もゼロです。つまり、風力も,太陽光も、同時に止まってしまいます。それだけの穴埋めのどうしますか。
    出来ませんね。それが、再生可能エネルギーの実態です。
    バイオマスも勿論駄目です。先ず、量的に全く不可能です。だってそうでしょう。太陽光と,風力が同時に止まって、それと同じだけの容量のバックアップを持つなんて全く勿体ないし、然もその手段もない。
     それが、再生可能エネルギーの実態です。
     太陽光など,幾ら作っても,無駄になるだけです。風力も同じ事ですよ。
     だから、再生可能エネルギーと言う幻想は捨てましょう。
     原子力は勿論駄目ですよ。

     さあ、どうしましょう。そこから始まる論理を効かせて下さい。