電力のシャブ漬けとテレビの洗脳CM - 純丘 曜彰

2011年04月15日 14:04

電通総研社長で電事連原子力開発対策会議委員長だった通産省事務次官出身の福川伸次。事故後の現在も絶対原発主義者だ。東電社長・電事連会長の清水正孝が、資材調達部門出身にもかかわらず、日本広報学会会長を務めていたことからも、官僚と電力と宣伝の関わりの深さがわかるだろう。


そもそも原発は世論操作のために生まれた。戦後、順調だったGHQの日本懐柔策は、1954年の水爆実験の日本漁船乗組員被曝で迷走。世論は反米へ傾き、左翼の扇動もあって収拾がつかなくなる。前53年に正力松太郎に日本テレビを作らせた柴田秀利は、「毒をもって毒を制す」といって日米両政府に働きかけ、「原子力の平和利用」として原子力発電所の建設をめざし、平和運動を原子力推進派と反対派に分断。

つまり、原発は、米ソ冷戦下において、その最前線に位置する日本の産業と生活のエネルギーが、米国から独占的に供給されるウランに依存し、米国側ブロックから離脱できないようにすることが目的だった。実際、我々はその恩恵を享受し、隣接する東側の国々に、豊かなエネルギーに基づく贅沢三昧を見せつけてきた。繁栄する日本は、米国側ブロックに属することのメリットを世界に示す宣伝ショールームだった。

しかし、冷戦が終わり、バブルも崩れると、状況が変わった。産業の成熟に電子化も加わって、重厚長大型の製造業が国内から減り始めた。1973年に出生率が頭打ちとなり、少子化人口減は必至となった。そのうえ、自然保護運動の高まりとバブル後の不況で「資源節約」と「省エネ」が基調となり、個々の電器の電力消費量は劇的に減っていった。そして、2007年のリーマンショック以降、日本の総電力消費自体が減少に転じた。

ここにおいて、官僚側は、前と同じ作戦、すなわち、自然保護運動を、CO2削減派と原発アレルギー派に分断する工作を計画する。このような世論分断工作は、歴史をたどれば、戦前の国家社会主義ドイツ労働者党、つまりナチスのもの。左翼台頭に際して、連中は祖国をソ連に売る国賊だ、我々はドイツ独自の社会主義を打ち立てる、と言った。日本の官僚は、左翼を抑えるために、国をまるごと米国側に売り渡したのだから、さらにタチが悪い。だが、この数年の原子力宣伝工作は、ほとんど成功していない。「放射能を使えば、どんなバイ菌も殺菌できる」などというアホなコピーでも洗脳できた戦争直後の日本人より、ずっとメディアリテラシー能力が高くなっているからだ。

いま、東電は、福島原発のみを会社から分離して切り捨てようとしている。ところが、安全院は、レベル7として東電そのものを切り捨てようとしている。その安全院も、中立性がないとして経産省が切り捨て、その経産省も、天下りの温床として政府は切り捨てようとしている。そして、その政府も日本国民が、その日本国民も、米国や世界が切り捨てようとしている。あんなにみんな「一丸」だったのに、自分たちの側が自滅的に分断していっちゃってどうする。だからといって、調子に乗って反原発デモなんかやってると、連中はエリートパニックを起こし、公安を動かしてなんでもタイーホするぞ。もっとも、そんな強権発動をしたら、いよいよ日本はバラバラになる。こんな大変なときなんだから、どっちももっと頭を冷やせよ。

いまだに、電気が足りない、もっと原発は必要だ、と金切り声を上げている政治家や評論家、原子力学者もいるが、まともな研究者や産業人なら、前東大学長、現三菱総研理事長・東電監査役の小宮山宏をはじめとして、もはや日本の電力需要は増えない、ということを、本音ではよく知っている。とにかくこの数年の夏の需要ピークだけの問題だ。それを乗り切れるかどうかを決めるのは、官僚や東電ではない。私たち自身だ。私たちが電気を足らすのだ。

パチンコには行かない、行かせない。飲料自販機は使わず、店でもアルミ缶は買わない。まばゆい照明でハイにさせ、いらないものを売りつけるデパート、遊園地、野球場にも用はない。くそおもしろくもないテレビなど、まっ先に消す。友だちとは、電話やメールではなく、直接に会って語り合おう。映画やゲームではなく、恋人や夫婦で目を見つめあう時間を大切にしよう。子供の小さな手をとって、家族でゆっくり散歩し、近所の人にあいさつをしておこう。ひとりのときは、青い空、星の空を心静かに見上げ、雄大な景色の移りゆきを感じてみよう。私たちにできることはいくらでもある。経済一辺倒でCMにたぶらかされ、便利なはずの電気に奪われてしまっていた私たちの時間を取り戻そう。

(純丘曜彰 博士(大阪芸術大学芸術計画学科教授/元テレビ朝日報道局報道制作部 『朝まで生テレビ!』ブレーン))

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