電力ビジネスの今後の焦点は太陽光だけではないはず

2011年05月30日 12:27

太陽光にずいぶん注目が集まっています。ソフトバンクの孫さんが音頭を取り、全国の多くの知事さんたちが集まり、また菅総理は1000万戸に太陽光パネルを設置するとサミットで確約しました。しかし太陽光だけに注目するのはどうも違和感があります。もっと視野を広げた議論が必要だと感じます。


太陽光は発電が天候に影響されるので、駄目だという意見もあり、また発電力が小さいということも問題視されていますが、それは本質的な話ではありません。
電力は蓄電できないので、夏場の電力消費のピーク時にあわせて発電設備能力が整備されてきています。だから普段は設備がフル稼動しておらず、電力は余っているのです。太陽光が不得意な深夜などはまさに電力が余っており、電力会社はオール電化で消費電力の平準化を進めようとしているぐらいです。問題はピーク時の電力確保です。

太陽光発電は、夏場の電力消費が増えるときは、太陽光による発電量も増えるので、すべて太陽光に変えるというのではなく、ピーク時対策としてはありえます。この点を木走正水さんが、ブログで冷静に指摘されているように感じます。
太陽光発電は「積分値」ではなく「微分値」で見ると有益性が見えてくる – 木走日記 – BLOGOS(ブロゴス)

いろいろ太陽光の欠点を懸念する意見が見られますが、ほとんどの問題はクリアされます。日本は都市部以外は土地が余っているので、メガソーラーが現行法で農地に設置できるかどうかはわかりませんが、問題があっても、その気になれば法改正をすれば可能です。現在はコンクリートで基礎をつくる農業プラントも確か現在では農地につくれませんが、それもつくれるようになるものと思います。

シリコンなどの資源の問題はあるかもしれませんが、最大の問題はコストです。現在は一戸建て家屋で200万円程度と設置への初期投資が高く、回収ができない、あるいは回収に極めて長期を要します。また発電効率も悪く、他の発電方式に比べ割高な発電だということにつきます。

普及を急ピッチで促そうとすると、設置に対する補助金、あるいは余剰電力買取りが鍵になってきますが、それは確実に政府の出費が増加することを意味します。

もし太陽光パネルにイノベーションが起こり、大きく価格が下がり、さらに発電効率があがれば、状況がかわるので、こういった財政出動は、目標値を掲げ、技術やビジネのイノベーションを促進する期間を限定することが望まれます。可能性があるのなら、積極的にイノベーションに投資することは決して負の遺産となりません。
ただし、エネルギー対策特別会計についての詳細はわかりませんが、組み換えを行うことも必要でしょう。見る限り、あれもこれもの事情に合わせた予算だと見えますが、戦略はなにに賭けるかを絞り込んでこそ戦略になります。
エネルギー対策特別会計(経済産業省PDF資料)

しかし、原発に代替する電力となると、太陽光ではありません。発電効率があがれば曇天でも発電できるでしょうが、それでも安定的な電力品質は保てません。風力も怪しくなります。他のコストがかからない、安定して発電できる自然エネルギー利用を考えなければ、脱原発というのは絵に描いた餅にすぎません。地熱発電は現在でも日本は優れた技術があり、原子力と遜色のない発電コストですが、プラント建設に時間を要します。

しかし、電力不足はまったなしの状態です。もし、定期点検中の原発の再稼働が、地元の反対で、できなければ、さらに深刻な電力不足の状態が続きます。それこそ日本経済の危機がやってきます。

問題は、太陽光にしても、風力にしても、また不安定な電力を組み合わせることに関しても、かなりの大きなイノベーションが必要であり、それが実際にどうなっていくかは、誰にも予測がつかないことです。半導体のムーアの法則のようにはいきません。しかし、これまで着手に遅れていただけに、イノベーションを起こす余地がまだまだ残されています。

そうなるともっと異なるアプローチで、節電ビジネスのほうが実を取るという可能性もでてきます。20%節電効果をあげれば、必要な電力も20%減ります。

そう思っていると、さっそく記事がでていました。記事によると、空調機のダイキンが太陽光の赤外線を最大で約90%反射させ、室内の温度上昇を防ぐ塗料を開発し、すでに販売し始めているというのです。工場の屋根に塗れば、空調機器で使用する電力を15%程度が節電できるそうで、順調に引き合いが増えているとのことです。
この塗料以外でも、節電ビジネスにさまざまなイノベーションが起こってくるに違いありません。
ダイキンの「塗るエアコン」売上高倍増 工場で15%節電も – SankeiBiz(サンケイビズ) :

なにか太陽光ビジネスがホットになってきそうですが、それはそれで良いとしても、そろそろ冷静に、日本のエネルギー・ビジョンを描き、なにを変えれば良いかをしっかり議論し、カテゴリーを超えたイノベーション競争が起こるしかけを考えないと、太陽光こけたら皆こけたということになりかねません。

しかし、いったい誰がこのような議論を行い、政策に反映していくのかがよくわかりません。与野党で、この日本の経済に大きく影響するエネルギー問題についても互いにしっかり議論してくれればと思うのですが、どうも政党政治の欠陥ばかりが目立つ昨今は、互いに足を引っ張り合っているうちに政治そのものが迷走し始めたように感じてしまいます。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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