震災だけでなく、日常的にフェアトレードを - 米崎 義明

アゴラ編集部

未曾有の被害をもたらした、東日本大震災からすでに2カ月以上経った。この震災における寄付、義援金、ボランティアによる支援が、今なお続いている。しかし、与えてばかりの復興支援は、現地の人の自立を阻害しかねない。
本来の復興を目指すには、「エンパワーメント」、つまり自立的な復興を重要視しなければならず、「依存」から脱却する必要がある。どうすれば、被災地をエンパワーし、「依存」から「自立」させることができるのであろうか。

被災地との関係を、先進国と途上国の関係に置き換えてみる。途上国の生産者は先進国に依存することになる。例えば、途上国の人は、生きるためにコーヒー豆をタダ同然の労働賃金で、先進国の企業に買い叩かれて生活している。これは、生きるためにコーヒー豆を売るという選択肢しかなく、結果的に先進国の企業に「依存」するということになる。アマルティア・センが提唱する、‘潜在能力の問題’である。選択肢を増やし、尊厳につながるように自由を拡大し自立を確保しなければならない。


被災地のエンパワー、選択肢の拡大を促す手段の一つにフェアトレードがある。従来の貿易取引は仲買人や流通業者が中間に入り手数料をとる。フェアトレードとは中間業者をなくし、フェアトレード団体が直接生産者から買い取り、販売する。生産者は正当な賃金を得ることができ、尊厳が守られ、持続可能な発展につながる。

元来フェアトレードは、大資本や多国籍企業などの搾取に苦しむ発展途上国の農業生産者を守るために考案された理念であり手法でもある。フェアトレードが、弱い立場にある途上国の人々の生活の改善や自立を、買い物を通じて支援する「連帯活動」であることから、フェアトレードには被災地を支援し、被災地の人々と連帯していく上で応用可能なノウハウが、多く含まれており、今回の震災にも活用できる。
政府や自治体が学校給食などで被災地調達を増やしたり、レストランや企業の社員食堂などによる被災地支援メニューの導入などは、既に方々で始まっている。

今回は国内の復興ということもあって、こういった事は盛んに行われるが、国外の問題だとフェアトレードは注目を浴びていない。なぜかだろうか?コーヒー豆のような、はるか遠い問題であると、自分とは関係ないと思ってしまいがちだからか。むしろ、搾取していようがしていまいが安く商品を買えてHAPPYと考えているからか。よく考えてみてほしい。生産を外部化し、タダ同然で労働力を買いたたくことで、生産価格は下がる。しかし、国内の生産の需要も下がってしまい、結果として国内の生産価格も下がるのである。これを平均利潤率均等化の法則といい、外部化とは一時しのぎにすぎなく、結局は自分に返ってくるのである。今後日本でフェアトレードを普及させるには、消費者の意識の変革が必要となるだろう。

(米崎義明 by charity japan)

コメント

  1. hkeiko より:

    発展途上国の農民を助ける最も有効な方法は日本が農産物の関税を撤廃することです。コーヒーは日本で生産できませんから輸入関税は低率ですが、米には800%近くの関税が課せられます。ODAで金をばら撒くよりはるかに発展途上国の人達の経済的自立を促すことは間違いありません。日本の農家は貧しい国の農民を犠牲にして過剰に保護されてきました。TPP加入はこれまでの利己的農業政策を転換するきっかけになるでしょう。

    被災地を途上国になぞらえるのは無理があります。何故なら途上国の人は先進国に自由に出稼ぎや移住はできませんが被災者は自分の意思で都会へ移住できるからです。高台に移っても働く場所はごく僅かです。都会であれば仕事も家もあります。移住といっても狭い日本のこと、僅か数百キロ離れるだけで言葉も習慣も同じです。また必ず襲ってくる津波に怯え行政の世話になりながら暮らすより安心して生活できるはずです。