やばいぞアメリカ(3)-「日本化」がアメリカを駄目にする

2011年06月09日 10:00

「理念国家」のアメリカでは、国家的危機に直面する度に「建国の原点」に立ち帰って論議をする伝統があります。一方立ち帰る「原点」を持たない日本の場合は、如何なる場合も本質的な論議をする習慣を持ちません。

この様な日米両国の仕組みの違いは、1971年に起きたペンタゴン・ペーパー事件と沖縄密約問題の司法審理に表れています。報道の自由を巡って上告審まで争われたペンタゴンペーパー事件の場合、政府の提訴を却下した米国連邦最高栽判決は、その後の憲法修正第1条(言論の自由)を巡る判例・政府活動に大きな影響を与えました。


それに比べ、「沖縄密約」問題での日本の司法審理は、機密資料の入手方法に終始し、言論と報道の自由は勿論、肝心の密約の真相究明は審理の対象にもなりませんでした。事実審理に力を入れて西山被告の有罪を認定した筈の日本の裁判でしたが、その後沖縄密約の存在が確認されても司法の陳謝はなく、当時の世論に迎合して報道の自由と西山記者を見捨てた報道機関も、反省する気配はありません。

本質的な問題は棚に上げ、対症療法に徹する日本の世相を物語るこのエピソードは、日米両国の「国家の品格」の違いを如実に示しています。

米国の建国の理念の一つに、分散によるチェックアンドバランスの尊重があります。その徹底振りは、首都ワシントンをコロンビア特別区(DC)と言う連邦政府の直轄地域として特定の州の影響を避け、各州の州都は経済の中心から離す事にも示されています。

1930年代に入り、金融やメデイアの過度な集中は、国全体の障害を招く危険(システミック・リスク)があるとして、金融事業の複合化や特定資本が多数のメデイアを傘下に持つ事を厳しく制限しました。

処が、対話の「天才」リーガン大統領が編み出した「小さな政府」「減税」「強いアメリカ」と言う「見出し政治」が登場すると、それにメデイアが飛びつき、理念よりも簡便さを好む「金権効率国家」へと軸足を移し始めました。日本とは目的も手法も両極にあるリーガン式自由化が、結果的には過度な集中と言う日本化を招き、アメリカを内部から崩し出したのは皮肉です。

そして :
(1)改正通信法1996法  (1934年以来禁止されて来た、特定資本が多数のメディアを傘下にして影響を及ぼす事を認めた法律で、その後メデイアの統合集中が急速に強まり、数社で全てのメデイアを独占する現在の方向を決定的にした法律)
(2)グラム・リーチ・ブライリー法(GLB法)(1932年の世界恐慌の教訓として成立した、商業銀行による株式や社債の引き受け禁止、投資銀行による預金受け入れ禁止、商業銀行と投資銀行との提携禁止などを規定したグラス・ステイーガル法を廃し、これ等の企業を金融サービスグループとしての統合を許した法律で、巨大化によると金融危機を招いたとされた法律)
(3)政治資金規正法違憲判決 (2010年1月に下されたこの判決は、日本では余り報道されませんでしたが、企業や労働組合を含む組織団体の政治(選挙)広告資金の支出制限は、言論の自由を保障した憲法に違反するとして、政治献金の自由を最大保障し、金権政治を公認した重大な判決)

と言う「3悪」が出揃うと、循環器役の「金融」と中枢神経である「言論報道機関」が急速に集中され、「政治」とロビーストの癒着が蔓延し、理念に導かれた偉大な米国は、金に支配される普通の国に急速に転落して行きました。

国の基本に拘る事柄は、倫理や公正の原則に立って辛抱強く論議して来た米国ですが、近頃はすっかり様相が変り、ウォールストリートに有利な金融制度、富裕層に偏った税制度、貧者に厳しい健康保険制度、イスラエルと石油利権に偏向した中東政策など、重要な政治課題の改革は強力な抵抗にあって悉く苦戦しています。
正に、官僚の抵抗にあって改革の進まない日本に極似して来ました。

それだけではありません。日本最大、最強のロビー組織である「官僚機構」の天下りの悪習がアメリカにも伝播し、1998年以後に退任した国会議員198名のうち、43%がロビースト登録をすると言う腐敗ぶりです。

特に気になる事は、「悪法は法にあらず」と言う米国の理念が「悪法も法なり」と言う日本的法律万能主義に置き換えられつつあることです。私は、「倫理無き法律」は、「不正を合法化」する政治の道具で、独裁化に通じる危険な考えだと思って来ました。その意味でも、米国の日本化は、富裕層独裁国家への転落を意味する危険な道です。

改革を外圧に頼る日本人とは異なり、福沢諭吉が学んだ「独立自尊」の本家として、行き過ぎを自ら修正する伝統を持つアメリカ国民の奮起に期待していますが、「理念国家アメリカ」への復活の道のりには厳しいものがあります。

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