ベースマネーに関する2,3の事実

2011年09月07日 23:07

最近ツイッター上で、


もって自戒の念としよう。RT @tedtakeda まあ、都合の良いところだけ切り取ってデータを見る悪癖のある方々は、いつの世でもいらっしゃるものでして…

というやり取りを交わしたけれども、データの見せ方しだいで印象は大いに変わるものだ。私の以下の記述も決して中立的ではないかも知れないけれども、意図的に日本の金融緩和は不十分だという印象を与えようとしてグラフを書く人(と、それに引っかかっている人)がいるようなので、基本的な事実だけを記しておきたい。


米国のベースマネーの残高は、2011年6月現在で2兆6472億ドルで、2009年頃の1兆8000億ドル程度の規模よりもさらに増加している(QE2をやったからね)。他方、2011年第2四半期の米国の名目GDPは、(年率換算で)14兆9968億ドルである。したがって、ベースマネーの対GDP比は、17.65%である。

これに対して、日本のベースマネーの残高は、2011年6月現在で113兆4780億円であり、2011年第2四半期の日本の名目GDPは、(年率換算で)460兆6328億円である。したがって、ベースマネーの対GDP比は、24.64%である。すなわち、FRBのQE2以後においても、経済規模との対比でいうと、日本銀行は先進国の中で相対的には最もバランスシート規模の大きな中央銀行である

日本は、欧米に10年以上も先立つ形で金融危機に突入した。そのために、日銀は1995年頃から金融システム対策として豊富な資金供給を行うようになり、バランスシートの規模が拡大し始めた。一方、米国のFRBおよびECB(ヨーロッパ中央銀行)が、同様の措置をとるようになったのは、リーマンショック後の2008年第4四半期以降である。

リーマンショック後、欧米の金融システムは文字通りの危機的状態に陥ったので、金融システム対策としてFRBやECBが流動性供給を行う必要性は高かった。これと比較すると、日本の金融システムはリーマンショック後も小康状態を保っていたので、日銀が同様のことを行う必要性は低かった。そのために、2008年前後で日銀のバランスシート規模に顕著な変化は生じていない。

このために、日銀がすでに規模拡大をはじめていた1995年以降、2008年までの間のいずれかの時点を基準にして変化率をもとめると、欧米の中央銀行(とくにFRB)のバランスシート拡大率に比べて、日銀のバランスシート拡大率はきわめて小さいという印象になる。しかし、1995年を基準に比較すると、現在までの日銀とFRBのベースマネー対GDP比の増加率にはほとんど差がない。両者とも、3~4倍に増えている。

なお、現状では、準備預金に対して付利される(金利が支払われる)ようになっているので、ベースマネーの規模を単純に金融緩和の尺度と見なすことはできなくなっている

[訂正]
初出の際に、2つめの事実に関して「ベースマネーの増加率」としていたが、「ベースマネー対GDP比の増加率」が正しいので訂正しました。

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池尾 和人@kazikeo

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