9.11から10年

2011年09月11日 21:46

2001年9月11日の悲劇から、早いもので10年が経つ。事件現場となった「グラウンド・ゼロ」では追悼記念式典が催される。犠牲者の家族はグラウンド・ゼロの慰霊碑に家族の名前を見つけ、10年の時間を改めて刻むのだろう。少しだけ、個人的なあの時の経験とそれから起きた世界の出来事についての考察を書き記しておく。


あの日、結婚を控えていた僕は妻と暮らすことになる新居に引っ越してきたばかりだった。まだ開梱されていないダンボールもある中に妻が上京してきたのがあの日のことだった。

翌日は仕事を控えていたので一足先に寝ていた僕に妻は遠慮がちに「なんかアメリカで凄いことがおきているみたい」と声をかけてきた。起きてテレビを見るとちょうど二機目の飛行機がビルに突っ込むところだった。ワケもわからずテレビにかじりつき、とにかく何か大変なことが起きたと思いつつ、その日は床について。翌日からはこの事件のニュースは世界を駆け巡り、職場でも話題になった。

当時の同僚が丁度アメリカの西海岸に出張に行っており、その安否が気遣われた。今となっては西海岸にいた彼の安全がそれほど脅かされていたわけではないことは分かるが、その時は妊娠中の奥さんは半狂乱だったらしい。上司は「なんで彼を出張に行かせたのか。あんたが行けばよかったのに。」くらいのことを言われたとショックを受けていた。しかし、それほどに当時アメリカで大規模なテロが起きるなんてことは考えられていなかったということだ。

同僚も1週間もしないうちに帰国することができ、ホテルに缶詰になっていたために運動不足で太って帰ってくるというオマケつきだった。と同時に、アメリカテロの日本国内での衝撃は徐々に落ち着いてきていた様に思う。直後には日本でも同様のテロの可能性が取り沙汰されていたが、実際にはテロが起きることもなかった。繰り返しテロの映像は流されていたが、流されれば流されるほど、どこか現実と遊離した作り話めいた感じがした。

しかし、翌年にはブッシュ政権は「テロとの戦争」を唱えてイラクやアフガンへの攻撃を進めていった。日本も含めた国際社会はアメリカに賛意を示し、文明戦争めいたものに発展していった。この戦争はイラクにおけるフセインの逮捕、死刑と進んだが、欧米社会とイスラム社会の間の溝は今尚深い。

この事件は中東の民主化を進めたという話もある。しかし、当該国が民主化するかどうかは究極的には当該国の民衆の問題で、春先から続くアフリカの独裁政権打倒は当該国民の民度の高まりによって起きたことで、必ずしも外国の関与が必要ではないということの証左でもあると思う。少なくとも、国家がそれなりに豊かになるためには国民が労働力として十分に教育されていなくてはならず、国民全体の教育程度の向上が、必要であれば、いずれは民主化運動につながっていく。勿論、その国の民主化が自国の国益に適うとなれば介入することは否定されることではないが、少なくともアメリカの一連の中東への介入は民主化やその結果としての当該国の国民の生活改善につながったようには思えない。

当時盛んに「嫌われ者国家アメリカ」という言説が取り沙汰され、アメリカの自省を求める声も上がったが、結果としてアメリカはより「内向き」になった様に思う。中東での戦争の進退は常に大統領選挙と共にあり、その戦争の意義や結果が継続的に評価されてきたわけではない。中東での戦争は欧米で意見の相違もあり、英米とその他のヨーロッパ諸国は仲たがいするまではいかないが、緊張関係にはあった。

あれから10年。アメリカに一極集中するかと思われていた一人勝ちの世界は、1)英米 2)EU 3)ロシア 4)中国 5)中東 6)新興諸国 といった具合に分散していった。だが、リーマンショックなど先進諸国で起きた金融危機に端を発した財政危機の表面化は、あのテロがなくともアメリカの一極集中は続かなかったことを示している。あのテロによって多極化、無極化したわけではなく、たった一つの国が世界を担う限界がそこにはあったのだ。

「世界の中心は西に移動している」という俗説がある。中東で生まれた文明がギリシャローマからフランス、イギリスと渡り大西洋を越えてアメリカに行き、これからは太平洋を渡って中国に至るのだという話しだ。そうなるかどうかは分からないが、一つ言えることは世界は一国が代表できるほど小さくも単純でもないということだ。日本はその移り変わりの中で翻弄されてきた面もあるが、主体的に世界を変えようとしたことはない様に思う。

スティーブ・ジョブスはスカリーをCEOにスカウトする時に「世界を変えてみないか」と言ったという。紆余曲折はあったが、ジョブスは世界を変えた。9.11のテロリストが世界を変えようと思っていたとは言わない。しかし、彼らは一つの世界に抵抗しようとした。僕達はその中で翻弄されるだけではいけない。

「僕の手で世界を変えるんだ」

古川賢太郎
ブログ:賢太郎の物書き修行

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