量的緩和2

小幡 績

QE2ではなく、量的緩和のエントリーの続きである。


日本銀行が世界を驚かせた2001年3月の元祖量的緩和を要約すると以下のとおりである。

1.金融緩和を金利の下げから、資金供給量に変更した。
もっと厳密に言うと、無担保コールレート(オーバーナイト)から、日本銀行当座預金残高に変更した。

2.この量的緩和(あるいはゼロ金利)の継続期間を明確化した。消費者物価が安定的にゼロ%以上上昇するようになるまで、ゼロ金利を継続するとした。量的緩和(ゼロ金利)の時間軸効果と呼ばれている。

3.量的緩和のターゲットを5兆円とした(この後、繰り返し増額することになる)。

4.長期国債の買い入れをすでに月4千億円やっていたが、これを増額した。買い入れの総額の上限を日本銀行券の発行残高を上限とした。この銀行券ルールは初めて明文化された。

量的緩和を一義的に定義すると、上記の1がそれにあたるだろう。古いマクロ経済学の教科書の金融政策のところには、金融政策のターゲットは金利でもマネーでも要は市場で行うのだから一緒だ、と書いてあり、伝統的な理論においては、量的緩和は何の効果もないことになる。

それは白川現日銀総裁が京都大学教授当時の書き物でも、出版された本でも、その気持ちで書かれている。量的緩和は本質的には何も効果がないのだと。効果があるとすれば、副次的なもの、あるいは2から4の効果であると。

それはそのとおりで、狭義の量的緩和はまったく効果がなく、副作用だけが残ると言っていい。副作用とは、短期金融市場が死んでしまうことである。

これは、白川氏も福井元日銀総裁も繰り返し強調したことで、コール市場で資金を取らずに手数料を考えると、日銀のオペの相手方になって直接調達した方が安くなってしまうからである。

短期金融市場を殺すために、わざわざ日銀当座預金を30兆も積ませるのは百害あって一利なしとなる。ゼロ金利も同様のところがあり、運用してもゼロでは市場が供給サイドから殺されてしまうということがある。だから、どうしてもゼロではなく、0.1%とか0.25%にしておきたいのだ。

いずれせにせよ、量的緩和は短期金融市場を殺すので、非常事態以外は使いたくないものであることは間違いない。

短期金融市場を殺すことは、量的緩和後の日銀の手段も奪い金融政策にもマイナスであり、市場参加者、金融機関にとっても短期金融市場が不安定で使えないというのは最も恐ろしい事態で、金融市場にとっては最悪だ。

だから量的緩和は解除したかったのだ。

それなのに、欧米がいまや導入するようになったのはなぜなのか。