失敗しそうなモバキャスと周波数オークション

山田 肇

携帯端末向けマルチメディア放送(モバキャス)は、アナログテレビ跡地のVHF帯を用いて、モバイル端末向けにリアルタイムと蓄積型の放送を行う新サービスである。放送設備を運営するハード会社と放送コンテンツを提供するソフト会社を分離するという総務省の方針で、ドコモグループとKDDIグループがハード免許を争ったが、総務省(電波監理審議会)の比較審査によって2010年9月にドコモグループのmmbiが勝った。

比較審査では、コンテンツ提供者が支払う「受託放送役務の料金」が安いmmbiのほうが、「受託放送役務の提供に関する事項」がより充実していると判断された。それから1年後、総務省はソフト免許の申請を受け付けたが、mmbi一社だけが13セグメントを申請する結果となり、もくろんだハード・ソフト分離は実現しなかった。

なぜ、一社しか申請がなかったのだろうか。日経ビジネスonlineは、「放送インフラの脆弱性」と「スマートフォンの急速な普及」が理由であるとした上で、次のように指摘している。

総務省は、モバキャス技術を海外に売り込むシナリオも描いていたようだが、来春のサービス開始前に、早くも「ガラパゴス」状態に陥ろうとしている。

比較審査はこれまでも失敗してきたが、その上にモバキャスが積み重なろうとしているわけだ。提出される計画は飾られた作りものであって、それを比較審査して免許を与えても、ビジネスはその通りには進まない、ということに総務省もそろそろ気づいてほしいものだ。

比較審査の問題点を改善するのが周波数オークションである。明日9月21日午前10時半からニコニコ生放送で「第二回周波数オークションに関する“ウラ”懇談会~“電波利権”を暴く!」を放送する。ぜひ、ご覧いただきたい。

山田肇 - 東洋大学経済学部