評価経済のなかでどのように企業として生き残っていくか:AIRBNBという画期的なサービス

松岡 祐紀

これもひとつのシェアという発想で生まれたサービスだろう。「AIRBNB(エアービーエヌビー)」というサービスをご存知だろうか?

空いている部屋を貸すというシンプルなサービスだが、14ヶ月で1000%成長したというこちらの記事(2011年4月現在)にあるように現在アメリカを中心に爆発的に広がっている。(詳しいサービス内容およびビジネスモデルもこの記事に詳しく掲載されています)

上記記事などにはこのビジネスモデルが生まれた背景などが詳しく書かれているが、実際に体験した経験を元に、このサービスを分析した記事はあまり見当たらないのでこの場を借りて書いてみたい。

今まで合計3カ国で利用したのだが、最初に利用したのはオーストラリアのシドニーに今年2月に行った時のことだ。


シドニーとメルボルンにそれぞれ一週間程度、宿泊する予定だったのだが、現在オーストラリアは不動産バブルで物価が総じて高く、特にホテル代が異常に高かった。一人旅だったのでホテル代にお金を費やすのはもったいないと思い、AIRBNBを利用してみた。

シドニーで滞在したのは画家とグラフィックデザイナーをしている中年夫婦の家で、子供たちが成人したので、空いた部屋を貸しているとのことだった。

彼ら夫婦とは意気投合し、一緒にギャラリーのオープニングパーティーに行ったり、ディナーを一緒にしたりと楽しい日々を過ごした。(詳しくは拙ブログのエントリーをお読みください)

メルボルンでも同様にAIRBNBを利用して、快適に過ごした。ただ問題はやはり、部屋の間借りに過ぎないので、色々と気を使うことも多い。そこで今度はマンションの一部屋を丸ごと借りることにした。

今年の4月にブエノスアイレスで2回ほどAIRBNBを利用したのだが、どちらもマンションの一部屋を丸ごと借りたので、プライバシーも守られ、またホテルのように朝食の時間など気にすることなく、非常に快適に過ごした。

上記のことから下記のような旅行者にはホテル以上に利用価値があるサービスだと思う。

1. 一人旅である程度の英語力があり、ホストとの会話も苦にならない。 一軒家あるいはマンションの空いている部屋を借りる。

2. カップルや夫婦で旅行をし、自炊などをして現地の生活を楽しみたい。 マンションの一部屋を丸ごと借りる。(この場合はホストとのメールのやりとりが出来る程度の英語力があればいい)

上記に当てはまるのであれば、ホテルよりもAIRBNBをお薦めする。もちろん、ほかにもただで泊まれるカウチサーフィングのようなサービスもあるので、色々とニーズに合わせて利用すればいい。(カウチサーフィングは文字通り、空いているカウチ(ソファ)を借りて寝泊まりするのが基本なので全くプライバシーがないと思ったほうがいい)

先週、チリに行ってきたのだが、ホテルとAIRBNBを利用してみた結果、圧倒的にコストパフォーマンスが優れていると思ったのは、マンションの一部屋を丸ごと借り切れるAIRBNBだった。理由は、ホテル一部屋よりも圧倒的にスペースも広く、自炊も出来、朝食の時間、部屋の清掃などの制限が全くないことが挙げられる。

日本ではまだ登録している人は少ないようだが、今後人口減で空室が増加するのは間違いないので、AIRBNBのようなサービスを積極的に利用して、収入増加とそれに英語が苦手な方はその練習だと思って一石二鳥を目指すといいかもしれない。

評価経済が今後の経済を左右されると言われて久しい。AIRBNBはまさにその申し子と言える。物件を選ぶ際に最も重要な要素は他者の意見だ。彼らの評価によって貸し手の信頼度は決まる。

企業はウェブ上の評価を得るためにアフィリエイトや業者を雇って今まで必死になっていたが、ほとんどの貸し手は個人であるAIRBNBのようなサイトでは、そのような努力は成立し得ない。業者をわざわざ雇って評判を得ようとするよりは、自分たちが貸し手として最大限努力をしたほうが割に合うからだ。

今後はこのように「個人と個人」を結ぶサービスが隆盛を極めるだろう。これからの企業が生き残る道は「そのサービスを使う人、供給する人の双方にとって有益であるか」を心がけ、両者にとってそのサービスを使うメリットをいかに生み出すかにかかっている。

ウェブはあらゆる種類の仲買人を駆逐してきたが、今後はAIRBNBのような「新しい形の仲買人」が評価経済のなかで大きな立ち位置を占めていくのではと思っている。

株式会社ワンズワード 松岡祐紀
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