みんなの党の老人向けポピュリズム

池田 信夫

みんなの党の江田憲司幹事長のブログは、経済学を知らない人が経済を論じるとこうなるという落とし穴がほとんど毎回あって楽しめます。


今日の「みんなの党、10年80兆円の復興財源案は?・・・増税の要なし」という記事で彼があげている4項目(なぜか②が抜けている)の中で、財源として意味があるのは①のⅰと④と⑤の歳出削減だけです(これは民主党も言っている)。問題なのは、次の資産売却です。

ⅱ 朝霞宿舎をはじめ、国家公務員宿舎21万戸を売却すれば最低1.8兆円、政府保有株の売却、例えば、日本郵政株は、民主党政権が進めた「株式処分停止法案」を廃止さえすれば8兆円、政投銀株で1.3兆円、JT株で1.8兆円、その他国有資産の売却で2兆円、あわせて約15兆円。

③次に「埋蔵金」。国債整理基金への定率繰入れ停止をすれば9.8兆円。この関係で新発国債の想定利子2%と実勢1%の差額で1兆円。労働保険特別会計の雇用勘定に4.2兆円、財政投融資特別会計に1兆円。あわせて16兆円。

国が余計な不動産や金融資産をもつべきではないので、これを処分するのはいい。「埋蔵」されている特別会計の剰余金があるなら、それを国債の償還財源にすることもできます。しかしこうした資産は、今でも国のバランスシートに載っているので、それを売却して負債(復興国債)を償還しても、資産と負債が両建てで減るだけで、純債務は変わらない。これは上杉隆氏と同じ初歩的な錯覚です。

みんなの党は「純債務でみれば国の債務は900兆円もない」と主張しています。それは正しいのですが、国有財産や「埋蔵金」をいくら処分しても、将来の国債償還財源を先食いしているだけだから、純債務は減らない。いいかえれば、いま増税しないで国債を償還しても、増税を先送りして将来世代に負担を転嫁しているだけなのです。

みんなの党が「増税なき復興」をアピールしたいのはわかりますが、永遠に増税を先送りすることはできない。増税しないと、そう遠くない将来に財政が破綻します。いま増税しなければ将来世代に多く増税しなければならない。世代間の負担の不公平が大きく「財政的な幼児虐待」といわれている日本で、みんなの党までこういう老人向けポピュリズムを主張するのでは、若者は救われません。