海外展開を考える。

小谷 まなぶ

 日本の国際戦略が、一体、どの方向に向かっているか分からない状況だ。


TPPを推進して自由貿易を拡大したいという考えがある一方で、円高で、海外移転する企業が増えているので、日本国内の産業が空洞化しないように抑える動きがある。
 日本国内の市場が拡大しない限り、海外に市場を求めて企業が動くのは当然のことである。日本の将来を考えたときに、一番大きな問題は、人口減少が揚げられる。不況により、市場が縮小気味である以上に、2050年までに、人口が3000万人以上減少するというインパクトの方が大きい。
 出生率を考えると、2050年で人口減少が止まることなく、その後も、継続して減少していくことが理解できる。
 今、年金の受給年齢の引き上げが話題になっているが、物理的に労働人口が減り、年金を支払う財源の確保が問題になっているからである。高齢化社会と伸びない出生率、人口減少という問題が、これから先、企業の将来への発展と言うことを考えれば、日本国内だけでなく海外にも拠点を作り、海外でもビジネスを成長させていくことを視野にいれることは、重要課題である。日本の隣国である中国の経済成長について、話題に上っているが、中国の海岸部にいたっては、鈍化している感じがする。しかし、内陸部の2級都市、3級都市といわれている地方の主要都市では、今尚、建築ラッシュが続いている。昨日まで、西安に行っていたが、西安の郊外には、巨大なマンション群、高層ビル群が立ち並び、現在も、非常に多くの建築現場が稼動していた。
 リーマンショック以降、金融緩和と膨大な金額の公的資金の投入により、インフレ傾向なった中国では、金融引き締めで、銀行融資を受けるのが難しくなっている状況である。      しかし、金融引き締めを行われている一方で、銀行融資が難しい状況であっても、国営企業や、ファンドなどからの融資が行われており、銀行以外の資金が流入していることで、経済活動を継続している。中国における資金調達の方法は、銀行融資以外にも、いろいろあるようである。
 ある不動産開発業者からこんな話を聞いた。「中国でマンション開発をする際に、10%は、自己資本で、後は、銀行などから融資を受ける。初期の自己資本がない場合は、ファンドや、国営企業などから短期融資をうけて、自己資本を作る。それで、銀行から融資を受ける。」このやり方で、マンション開発をすれば、ほとんど自己資本がなくても、開発業者は、マンション開発を行うことが出来る。
 また、短期融資ができる自己資本がある国営企業の責任者は、ファンドは、短期で、高い金利で貸し付けるために、膨大な利益を得ることができる。マンション開発業者は、マンションの建設が完了する前までに、マンションを完売することで、銀行融資を返済する。土地の使用権に関しては、政府から買うために、政府との関係が強いことで、市場価格より安く仕入れることができるので、人脈が有る開発業者は、膨大な利益を出しやすいということになる。また、都市の再開発という理由で、古いマンションに住んでいた住民は、立ち退き料として政府から生涯賃金に近い資金を得ることができ、その資金を元手にマンション購入をするのである。
 政府と民間開発業者が一体になって、都市開発をしているのである。
 今から10数年前までは、貧しい人が多かった中国だが、今では、高層マンションに住み、高級車に乗っている人が多い理由は、労働収入以外から得た利益も大きい。
 中国で高級品が売れる理由は、短期間にして膨大な利益を得た人が多いからである。このやり方で、中国全土に、市場経済の資本が流入しているのである。
 私が思うのは、中国経済の伸びが後何年続くか、バブルが崩壊するのではないかということを考える前に、今、このような状況で、所得倍増計画を実行している中国市場でどうやって商売するかを考えた方が、経営者とにとって面白みがあるのではないだろうか?
 
■小谷まなぶの中国ビジネス奮闘記(オフィシャルブログ)