3.9世代免許の比較審査は既存事業者優遇で不公平

山田 肇

今日、提言型政策仕分けで「電波行政」が議論された。僕も民間仕分け人として参加したが、最後に「3.9世代から周波数オークションを実施し、収入は一般財源とすべし」という提言(結論)が出た。今後、その通り、早期にオークションが導入されるよう期待する。

それにしても、今の3.9世代比較審査基準は既存事業者を優遇し、新規参入希望者を排除する不公平なものである。議論の際にも指摘したが、改めて記事しておこう。以下は、今朝9時ごろに電波部に提出した僕の意見書そのものである。

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『三・九世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案』において、「電気通信事業の健全な発展と円滑な運営への寄与」に関係する審査基準は次の通りである。

2 電気通信事業の健全な発達と円滑な運営への寄与
(1) 本開設指針又は平成二十一年総務省告示第二百四十八号に係る開設計画の認定を受けていない電気通信事業者等多数の者に対する特定基地局の利用を促進するための具体的な計画がより充実していること。
(2) (1)のほか申請者に割り当てている周波数帯の差違及び申請者に割り当てている周波数の幅に対する当該周波数を利用する電気通信事業に係る契約数の程度を勘案して、特定基地局を開設して電気通信事業を行うことが、電気通信事業の健全な発達と円滑な運営により寄与すること。

上記(2)項にある「割り当てている周波数の幅に対する当該周波数を利用する電気通信事業に係る契約数の程度」は「すでに割り当てている周波数帯における混雑度(以下、混雑度)」と読みとれるが、新規に参入を希望する申請者(以下、新規参入希望者)について「混雑度」をどう扱うかが示されていない。これは新規参入希望者には対応できない「混雑度」を審査基準にすることによって、新規参入希望者を排除することに他ならず、比較審査としての立てつけとして不備がある。

特に「契約者がいないから混雑なし」として扱えば、既存の事業者を優遇し新規参入希望者を排除することになり、法の下の平等という大原則に反する行政判断となる。

しかし、既存事業者を優遇する審査基準は「混雑度」だけではない。「開設計画に従って円滑に特定基地局を整備するための能力に関する事項」の中の「特定基地局の設置場所の確保に関する計画及びその根拠」も既存事業者優遇の審査基準である。既存の基地局に新基地局を併設することができる既存事業者は、既存の基地局設置場所の所有者から同意を得れば済むのに対して、新規参入希望者は全国で設置場所を見つけ、それぞれの設置場所の所有者から同意を得るために膨大な費用をかけなければならない。しかし、新規参入希望者に免許が与えられるかどうかはその段階では明らかでないため、申請をためらう新規参入希望者が出る恐れがある。

総務省から本年9月6日に『700/900MHz帯移動通信システムに係る参入希望調査の結果』が公表されている。それによれば、参入を希望したのはすでに周波数を割り当てられ、当該周波数を利用する電気通信事業を営んでいる者だけであった。

しかしながら、そもそも参入希望調査を開始した際の8月2日付報道発表によれば、「700/900MHz帯移動通信システムの実現に向けた制度整備の検討に当たり、その参考とするための基礎的な調査として実施するもので」「本調査への回答はあくまで任意であり、本調査への対応によって実際の申請の可否・内容が拘束されるものではありません」ということになっている。したがって、新規参入希望者の中には、参入希望調査に回答しなかった者がいる可能性がある。

参入希望調査の結果にかかわらず、新規参入希望者も公平に扱う審査基準を設けることが、総務省の義務である。新規参入希望者を最初から差別する審査基準を設けることは不適切である。

既存事業者優遇の『三・九世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案』は全面的に見直すべきである。

山田肇 - 東洋大学経済学部