欧米の腰が引ける訳 --- 仲宗根雅則

2011年11月22日 09:00

シリアの独裁者アサド大統領が、イギリスの新聞「ザ・サンデー・タイムズ」のインタビューに応じ、その様子が衛星放送アルジャジーラで放映された。
 
それは昨日、リビアのカダフィ大佐の次男セイフ・アル・イスラムが拘束された映像と並んで、定時ニュースで流れたのである。
→<リビア、カダフィ次男拘束と家族の不安

独裁者が今、欧米のメディアのインタビューを受けたことにもおどろいたが、近隣諸国で起きている中東革命が、まさに自国にも及んでいることを認めない圧政者の感覚に、あいた口がふさがらなかった。


女性記者のインタビューに対してアサドは、今シリアで起こっているのは民衆のデモではなく暴徒の騒乱であり、危険だと主張し、シリア国民をその危険から守るために政府軍が出動しているのだ、としゃあしゃあと言った。
 
さらに市民の死亡者が多数にのぼると記者が指摘すると、民衆が殺されたのは、逆に彼らが800人もの治安維持部隊員を殺したからだと言い返す。
 
アサドはそうした主張を、例えばリビアの故カダフィ大佐のように叫んだり吼えまくったりするのではなく、流暢な英語で静かに且つ理路整然と話すのである。
 
彼は、民衆の反撃に遭って権力の座を追われたり、殺害されたりして行く同じ中東の独裁者たちの惨状を知っている。
 
従って、あるいは内心穏やかではないのかも知れないが、そんな風にはまったく見えない落ち着いたしゃべり方で、聞く者が慄然とする内容を語り、弾圧をやめる気はないと断言した。シリア国家に奉仕するのだという、粗暴な圧制者の常套句を用いて。
 
結局シリアもまた、独裁者が自ら身を引く事態にはならず、民衆が彼を地獄の底に投げ込むまでは平穏は訪れないのだろう。それまではまだまだ多くの血が流れるのが宿命のようだ。
 
それにしても、リビアに平然と介入した欧米列強が、シリア、バーレーン、イエメンなどに干渉しないのはなぜだろうか。
 
シリアが中東ではエジプトに次ぐ軍事大国であり、同国が混乱することは地域の更なる不安定要因になるから、という説もある。
 
しかし、中東が既に混乱の極みにある今、そういう主張は空しく聞こえる。
 
結局同国の石油資源が、欧米にとってはリビアほど魅力的ではない、という判断がどこかでなされているのだろう。
 
イエメンはシリアとは逆に、中東でもマイナーな国家だから欧米各国が無視しているだけなのではないか。
 
バーレーンの場合は、同地に米軍が駐留している事実や、同国とサウジアラビアとの親密な関係などが影響してアメリカの足枷になっている。
 
サウジアラビアの王家とバーレーンの王家は同系列であり、民衆の蜂起で支配者が追われれば、米軍駐留どころか反米政権が生まれないとも限らない。
 
したがってアメリカは良くて傍観、ひょっとすると密かに民衆弾圧に手を貸している可能性だって皆無とは言えない。
 
そしてアメリカの立場を知る欧州各国もこれに同調して、手をこまぬくだけである。
 
また、既に革命が成就したはずのエジプトでは軍と民衆が衝突して、あらたな混乱が起こっている。
 
チュニジアやリビアも新しい国造りはこれから、という状況である。
 
中東の春は、欧米列強の思惑によって、革命の様相や進展や内容がそそれぞれ違ったものになるという、やりきれない現実を垣間見せながら、遅々として進まないフシがある。

仲宗根雅則

映像ドキュメンタリー作家・TVディレクター 
イタリア在中

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