電波利用料の活用 --- 鬼木 甫

アゴラ編集部

電波利用料は、不法電波の監視と無線局免許データの管理という電波監理に必要な直接的な事務経費に充てるために導入された(1992年)。その後携帯電話加入者の急増等により利用料収入が大幅に増加し、これに対応して利用料使途が次々に追加され現在に到っている。 その結果、電波利用料は狭義の事務経費だけでなく、効率的な電波利用のための政策経費(た とえばテレビデジタル化のための施策経費、補助金給付)としても支出されている。これらの点から現在の電波利用料は実質的に「電波目的税」に転化していると考えなければならない。電波利用料制度のあり方については、この実体に加えて電波が「無形の不動産」であることを認識し、中長期的には固定資産税など類似する他の政府収入とのバランスを考慮しつつ検討すべきと考える。


1. 電波利用料の過半は直接あるいは間接に携帯電話の加入者によって負担されており、 また電波利用料は実質的に「租税(電波利用税)」と同一の存在になっている。したがってその使途を現状のように「事業者など電波免許保有者の共益目的に限定する」ことをやめ、当面は携帯電話加入者・テレビ視聴者を含む消費者・国民全体による情報・通信活動の便益を増進するよう拡大すべきである。

2. そのため現在の電波利用料使途規定に、「消費者・国民全体による情報通信活動の増進」という旨の 1 項を付け加えることを提案する。

3. また具体的な方策として、「電波利用の現状と政策(電波白書)」の作成と公表、「電 波利用統計」の作成と公表のために電波利用料を支出することが考えられる。これまで他の分野に比較して、電波監理に関する施策・情報の公開はきわめて不十分であり、電波政策に関する国民の知識水準はきわめて低い。民主主義社会において国民の便益に資する政策を実現するのは、結局は政策内容に関する国民の理解であり、この理由から電波白書、電波利用統計の作成・公表は必須要件である。

なおすでに総務省によって「通信白書」が公表されているが、電波は通信以外の目的にも広く利用される社会インフラであり、電波白書は通信白書とは別個に作成することが適切と考える(土地利用白書と運輸交通白書が別個に存在する理由と類似する)。

参考: 鬼木甫「電波オークション・電波利用料および独立規制委員会に関する一問一答」(論 文、WEB サイト掲載)、2009 年 7 月、日経ネット IT+PLUS ネット時評、2009 年 10 月。

「行政刷新会議・提言型政策仕分け(2011年11月21日)」に民間評価者(仕分け人)として参加し、電波政策について発言する機会を得た。これは、その折に作成した「意見表明用メモ」を整形した文書である。2通あり、もう1通を下記にリンクする。

電波行政のあり方(新たな周波数の割当等)(意見発表用メモ)PDFファイル

鬼木 甫
(株)情報経済研究所