オリンパス事件の焙り出すもの

2011年12月05日 12:15

オリンパス事件に就いては、以前記事を書いた経緯もあり相変わらず興味を持っている。それにしても報道が少ない。少な過ぎる。

たまの報道に接したとしても、殆どが当局が何がしかの意図を持ってリークしたものの垂れ流しであり、マスコミが独自に取材したもの等殆どないのではと理解している。


少ない情報ではあるが、そこから得た、最初の印象はライブドア事件に対して見せた当局の熱の入れ方に対し、今回の冷え切った捜査対応である。

ライブドア事件は、結局は50億円弱の有価証券虚位報告(粉飾決算)に過ぎない。

しかしながら、当局はライブドアは必ず破綻させる。堀江元社長は実刑判決にし必ず服役させる。強引な起訴であっても、裁判所は所詮首振り人形で検察の決定に追随する。これは、飽く迄私の推測であるが当局の決意が伝わって来た。

そして、強制捜査の朝には予めリークがあったのであろう、テレビ局各局はヘリコプターを飛ばしライブドア本社のあった六本木ヒルズをぐるぐる撮影し、大勢の捜査官が本社に突入した。繰り返すが、50億円弱の有価証券虚位報告(粉飾決算)に対してである。

一方、ライブドア事件とは対照的にオリンパス事件の捜査に感じるのは駘蕩であろうか。当局のやる気が全く感じられない。

これも私の個人的な推測であるが、下記の如き落とし所を模索中と思う。

○上場は維持する

その為には、12月14日期限の過去5年分の有価証券報告書の訂正と、2011年度9月期の決算発表が必要であるが、何とかするのであろう。普通なら怖くて監査法人の承諾は難しいと思うが、裏で当局と話がついているのではと推測する。

これは、例えは悪いかも知れないが、20年以上窃盗を重ねて来た常習犯の犯行が露見しそれに対し直近5年の盗んだ品物と値段を申告し返金すればお咎めなしとの大甘裁定と思う。一体、何故こういう結論になるのであろう?実に不思議である。

○基本民事事件として処理する。刑事はスケープゴート以外やらない

本来A級戦犯と目される、歴代3名の社長達、詰まりは、下山岸本菊川各氏であるが、全く知らなかった詳細を知ったのはごく最近などと発言している様であり、捜査当局もそれを諒としている感じである。

どうも、これだけの事件であり、山田・森両氏はスケープゴートにされるのであろうが、飽く迄彼らの個人的犯罪として処理され、経営の中枢は無罪放免になると予測する。

○事件は限りなくコンパクトに処理する。具体的にはオリンパスのみに絞り過去5年のみを対象とする

本当の巨悪、濡れ手に粟で大儲けした連中は全て犯罪を問われる事なく放置される。過去5年のオリンパスの行為等それ以前の20年に及ぶ犯罪、不正行為の後始末、尻拭いに過ぎないはずであるが。

次に興味を持つのは、初めて不正をロンドンで摘発したマイケル・ウッドフォード元社長とオリンパス経営陣のスタンスの余りの違いである。

ウッドフォード元社長の主張は、要約すればオリンパスの如き上場企業には透明性が求められる。そして、不正があった場合は法の道理に従い、正されねばならないと言ったものではないか。

一方、今日に至るまでオリンパス経営陣の主張は、謂わば(オリンパス村)の論理で、いらん事(不正の告発)するな。そんな事しても会社も社員も幸せにはならない。隠匿を継続すべきである。というものである。

こういう変わらない、或いは変われない、オリンパス経営陣や、やる気の見えない日本の当局の対応を目の当たりにし、ウッドフォード元社長が取締役辞任し現経営陣と全面対決に舵を切ったのも当然の成り行きと思う。

ジャスミン革命から始まったアラブの春を、政治と経済の近代化が遅れた中東の現象と、上から目線で観ている日本人はさぞ多い事であろう。

しかしながら、今回のオリンパス事件の焙り出したものは、日本の悪しき病、村社会を脱しきれない企業統治、企業の不正を監視出来ず、結果市場の信用を棄損する株式市場、恣意的な捜査に終始する捜査当局、そして検察の起訴に対し首振り人形でしかない刑事司法と言った所ではないか?

アラブの春はアラブ人が自らの血を流しつつ苦労しながら進めている。一方、日本はと言うとイギリス人のウッドフォード元社長一人が頑張っている。

さて、スケープゴートを含めた事件関係者の逮捕であるが、事情通に拠ると年内はないとの事である。理由は一旦逮捕してしまうと当局担当がクリスマスや年末・年始の休みが取れず、墓参りとか行けなくなるからなのだそうだ。

日本はつくづく平和な国だと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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