石油文明から脱却するための具体的な方法 --- 山田高明

2011年12月07日 15:35

数ヶ月前、孫正義氏は年々膨張する化石燃料の輸入費のグラフを掲げて、「だから太陽光発電を増やしていかねばならない」と一席ぶった。一方、金融日記の藤沢数希氏の場合、結論部分が「だから原発維持」に代わっている。
だが、私に言わせれば、両者は共に勘違いをしている。なぜなら、今日、化石燃料の輸入費の75%が「石油代」であり、その石油は電力のわずか8%を担っているにすぎないからだ。よって、太陽光や原発を増やして火力発電の割合を下げたところで、化石燃料の輸入費はわずかしか減らすことができない。


表を見てほしい。これは07年度の統計だ。周知の通り、08年は原油の先物価格が史上最高値をつけ、その直後、リーマン・ショックによって急落するという異常な値動きをした。そのため08年度には化石燃料の輸入費が27兆円に届いたが、景気が冷え込んだ翌09年にはそこから十数兆円も急落するという荒々しい展開となった。よって、両年の統計はノーマルとはいえず、現時点に比較的近いのが07年の統計である。

07年鉱物性燃料データ

総務省統計局資料等から作成

表の内容について少し説明すると、「LPG」は液化石油ガスのことであり、運輸燃料や都市ガス原料として利用されている。また、「石油製品」というのは、原油精製による産物のことで、日本は原油とは別個にこれを輸入している。その8割強がプラスチック原料であるナフサであり、残りが少量のガソリンや重油などだ。ただし、石油製品に関しては逆に1兆円分の輸出があるので、差し引きでいうと純輸入費は1兆円である。よって、07年度における日本の石油輸入費は約14・3兆円であり、化石燃料全体の輸入費は約19兆円となる。

このように、実に約75%が石油代なのである。ゆえに化石燃料の輸入費を減らしたければ、なによりも石油の消費量を減らさなくてはならない。現在、原油価格はまたしても100ドルに上昇し、そのせいで化石燃料の輸入費も高騰しているので、これは喫緊の課題といえよう。では、どうすれば減らすことができるのだろうか。そのもっとも効果的な方法こそ「自動車のEV化」である。なぜなら、国内自動車は年間にガソリン約6千万klと軽油3千万klを消費する最大の石油消費主体だからだ。この自動車燃料需要こそが原油輸入の決定材料になっている(*原油の精製によりガソリンが26%、軽油が15%生まれる)。

ただし、全自動車をEVに置き換えた場合、内燃機関と電気モーターのエネルギー効率等を考慮すると、私の試算では、9千万klにおよぶ燃料消費が無くなる代わりに、新たに約3千億kWhの電力需要が生じる。これを賄うために石炭やLNGなどの発電燃料の輸入を増やしていたのでは、あまり効果的とはいえない。だが、幸運なことに、この分野で画期的な技術革新が生じている。

今日、天然ガス火力の平均発電効率は4割に留まる。それが約4千万トンのLNGを燃やすことで約3千億kWh(電力需要の約3割)を生み出している。よって、仮に発電効率が倍の8割にまで上昇すれば、燃料消費はそのままで、さらに3千億kWhの電力を余分に生み出すことができる。果たして、そんな魔法のような真似が可能なのだろうか? 実は可能化しつつある。

現在、最新鋭の1600度級コンバインドサイクルの発電効率は61%だ。対して、SO(個体酸化物)型燃料電池のそれはトップランナーで63%である。SO型燃料電池は単体で最新鋭火力の効率を追い越した上、1千度の高温排熱を出すので、蒸気タービンを使う通常火力や、あるいはプラス・ガスタービンのCC発電とも組み合わせ可能だ。さらに近年、排ガス部と復水器での低位熱を使った発電技術も急速に進歩してきた。これらの最新技術を組み合わせることにより、発電効率の8割化は今や射程内に入ったというのが現実だ。

この日本の技術力を結集した新型火力を早期に商用化し、旧式のガス火力だけでなく、石油火力と一部石炭火力も更新していけばよい。おそらく、20年くらいの時間をかければ、新規の電力需要は火力発電の効率向上分だけで吸収可能だ。つまり、発電燃料の輸入量を従来のレベルに抑えながら、結果的に9千万klの燃料消費だけを削減できる形となるはずだ。

また、自動車のEV化の大きなメリットの一つは、エネルギー源を分散させられることにある。内燃自動車ならば、ほぼ石油系燃料に頼らざるをえないが、EVならばどんな方式で発電した電力であっても構わない。一つのエネルギー源に頼らなくてよいということは、リスク分散と同義だ。よって、当初はEVのエネルギー源として天然ガスに頼りつつも、着実に地熱などの自然エネルギーも増やしていくのが望ましい。さらに、石油は船舶・ジェット機の燃料、化学産業用、暖房などの民生用としても利用されているので、液体燃料そのものの需要は依然としてある。この部分を藻類を使った国産バイオ燃料で賄っていけばよい。

以上のことを考え合わせると、高騰する化石燃料の輸入費を本質的に減らすためには石油文明からの脱却が不可欠であり、そのための具体策としてが挙げられるのが以下の三つである。

 1・自動車のEV化。
 2・天然ガス火力の発電効率の8割化。
 3・藻類を使ったバイオ燃料の本格生産。

これは国内の石油産業を終焉させる理論だが、その代わりに我が国は「中東からの原油の輸入」という頚木から永遠に脱することができるだろう。

山田高明(フリーランスライター)

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