長過ぎる学生生活の弊害

2011年12月16日 10:50

雇用問題は色々な因子が絡み合った複雑骨折の様なものである。欧州債務問題に端を発する世界同時不況。為替政策の不在による超円高と製造業の海外移転。本来、これを補う為の、新たな産業政策の不在と雇用創出の失敗。

しかしながら、学生側にも問題がある様に思う。学生生活が無駄に長く、実社会にデビューする最適時期を失している様に思えるのである。


ユニクロが検討する「大学1年生採用」は実に良い企画と思う。矢鱈広い教室で、やる気のない教師のカビの生えた様な講義を聞くより、実際の販売シーンに身を置き、「顧客の望むものはなにか」、「顧客を喜ばす店舗設計とは」、「顧客に便利な導線とは」、「集客に直結するプロモーションとは」といった内容を実感として体験する事は本当に得難い経験である。正に、鉄は熱いうちに打てである。

私は、何も全ての長い学生生活を否定している訳ではない。医学部は最も成功したシステムと考えている。先ず、医学部に進学する学生は、ほぼ全て医者になると言う明確な目的を持っている。学校は臨床の場である大学病院と基礎研究を担当する医学研究所に隣接し、教師は病院で実際に治療を担当する臨床医であったり、基礎医学の研究者である。こういう場所に身を置いて、教師や先輩と同じ空気を吸うだけでも医師に向かって一歩ずつ近づいて行くのだと思う。

問題なのは、こういう具体的な目的を持ったり、明確な着地点を設定出来ていない大部分、一般の学生せである。

流れに身を委ね、お気楽な同好会、それに続く飲み会、そして恋愛に大部分の時間を浪費しているのではないか?

成程、ネット普及以前には、広く、深い知識や叡智というものは大学や大学の周囲に点在する研究所にしか存在しない極めてニッチで高価なものであった。そして、一般の人間がこれにアクセスする唯一の方法、手段は大学生になる事であったと思う。

しかしながら、現在はPCを開けば世界中から欲しい情報を入手する事が可能である。大学まで出向き、お仕着せの授業を受ける事自体滑稽に思える。

そこで提案である。卒業生の受け手である産業界は、今回のユニクロの企画を更に一歩進め、高1で採用してはどうだろうか?

一方、送り手である教育界は、教育内容の徹底的なリストラを行い中学卒業で即戦力になる様に教育すべきと思う。

その為には、実社会で必要となる「読み」=「効果的な情報収集と整理され体系化されたDB構築」、「書き」=「深い洞察、思考に基づいた最適のアウトプット」、「そろばん」=「計数管理能力及び論理的思考」を集中的に教育し、生徒の習い性にすべきと思う。

断っておくが、私は何も若者は15才で勉強を止めるべきであると訴えているのではない。個人的興味や、或いは仕事に必要性があれば、ネット経由学ぶ事も大いにやるべきであるし、必要なら大学に聴講生として通い、尊敬する先生から学ぶのも良い事と思う。又、大学も開かれた学びの場として社会的使命を果たすべきだと考えている。

こういう考えに至ったのは、私の育った家庭環境とか経歴の影響が大きいと思う。

先ず、家庭環境であるが、今は亡き、1930年生まれの母親の最終学歴は小学校である。小学校を卒業して何をしたかと言うと、本人から直接聞いた話では、当時の「神戸銀行」に職を得受付業務の様な事をやっていたらしい。良く、一円でも収支が合わないと合うまで残業させられた様な思いで話をしていた記憶がある。

当時は小学校を終えて実社会に出る生徒が多かったので、多分社会で困る事の無い様に学校で真剣に教育していたのではないだろうか?密度の濃い小学校の6年間であった事は確実である。

一方、私であるが、小学校に上がる以前に母親から繰り返し言われていた事は、手に職を付けろと、この言葉のコインの裏表の関係にある、食い扶持に困らないであった。事情が良く判らない当時の私に、大工、左官、散髪屋さんどれが良い?等と良く質問して来た。母親としてこういう進路を強く期待していたのだと思う。

結局、学校に上がってから手先の余りの不器用さが判明し(通信簿で下から2が定位置)、職人への道は断念し高校に進学した。所が、地方で高卒の勤め先と言えば役所、農協くらいしかなく余程コネが無ければ職を得る事不可能でこれも断念。

手に職を付けろと、食い扶持に困らない重視で大学は工学部を選択したが、4年生の秋に自分の余りの工学的センスの無さに気付きエンジニアの道を諦め、商社に職を得、その後2度の転職を含め今日に至る。

決して謙遜ではなくて、「何者」かになりたいと思いながら、「何者にも」なれなかった人生であったと思う。回りが悪いとか、世の中がどうとかではなく、自分の思いが弱かったのだと思う。もう諦めているのであるが、諦めきれない所もあって、こうしてアゴラに記事を投稿しているのかも知れない。

私の経験は偏ったものかも知れないが、戦前の教育の長所を再評価し、10代半ばで社会に巣立つ事可能な教育に向けての教育改革を行い、その後必要に応じ若者の学びを支援する様な体制に変更すべきと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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