EXIT(出口戦略)の不在に就いて考えてみる

2011年12月17日 07:19

日本人は極めて秩序感覚に優れ、礼儀正しく、本来厄災とは無縁の国民の筈である。しかしながら、太平洋戦争での悲惨な敗戦以降も多くの厄災に苦しめられている。

それでは、日本に厄災を招く正体とは一体何であろう?


私は、EXIT(出口戦略)の不在こそが日本に厄災を招いていると思っている。

現在世間を騒がせているオリンパス事件にしても、財テクの開始に際し会社の財務体力から判断して、予め許容可能な損失額の上限を設定し、これを超えた場合無条件に損失の手仕舞いに移行するようにしておけば、単なる、良くある財テクの失敗で済んだ筈である。

EXIT(出口戦略)の不在により、会社の存続を危うくし、20年以上に渡りオリンパスを放置した東京株式市場の信用を失墜させてしまった。

過去に遡れば、太平洋戦争に突き進んだのは無謀であった。中国だけで既に充分に持て余している所に、更に英米を敵に回した訳である。冷静に考えて、極めて敗北の確率が高い訳である。ならば、開戦に先立ちどの時点で敗北を認め、敗戦を決断するか決めておくべきであった。

日米の国力、産業力を比較して、開戦後2年を経過して尚も戦況が膠着なら、間違いなく体力負けに至るので手仕舞いすべき。

制海権の喪失も考えられる。この場合だとミッドウェー海戦の敗北が判断基準となる。

沖縄決戦までやってしまった歴史が、日本政府が永らく苦悶する、基地問題の根幹にある事は間違いない。

今に眼を転じれば、喫緊課題は日本の債務問題の解決と言う事であろう。アゴラの最新記事も増税問題を扱った興味深いものである。

解決の為には、年金を中核とする社会保障費を削減する一方、増税により税収を増やすしか可能性は無いと思うのであるが、何故、一歩が踏み出せないのであろうか?

先ず年金であるが、こんな大昔に構築したシステムは手直し以前に既に破綻しているのではないか。これだけ老人(働かず、税と年金を収める事無く年金を受給する)が増え、一方、少子高齢化で、労働し、年金を納入する若者の数が減れば逆鞘になるのは当然である。

従って、そもそも制度設計に於いて、世の中の変化に応じ5年毎に見直すとか、最悪でも現役世代の年金納入額が高齢者の年金受給額を下回った段階で、一旦、破綻処理を行い、実情に即したシステムを再構築する様な仕様にしておくべきであった。

しかしながら、厚生労働省はこういう事は一切やらず年金資金運用基金の資金でグリーンピア建設の如き愚行に走り、結果赤字の垂れ流しとなり、1,953億円を投じて建設した施設を売却して回収出来たのはわずか約48億円と言う究極の無駄遣いに終わっている。

計画性なく無駄に資金を投入し、元来不安定な年金システムに更なる打撃を与える事になり、グリーンピア自体も当然のごとく経営不振になったことにより、2001年12月の特殊法人等整理合理化計画(閣議決定)において、「2005年度までに廃止、特に赤字施設についてはできるだけ早期に廃止する」とされた。また、年金積立金管理運用独立行政法人法(平成16(2004)年法律第105号)により、2005年度末までに全国13ヶ所のすべてのグリーンピアを廃止することになった。13ヶ所の内、7ヶ所が1988年までの歴代厚生大臣の地元であったことなどから、建設利権も指摘されている。グリーンピアは、公共的な施設として設置・運営されてきた経緯に照らし、また、地域の状況や周辺の自然環境の保全、雇用の確保を図る等の観点から、できるだけ一括して公共的、公益的な施設として引き続き利用されるように、まず施設所在道県等へ譲渡、それが進まない場合には民間へに譲渡するという方針の下で譲渡を進め、グリーンピア三木(兵庫県三木市)の譲渡により廃止・譲渡がすべて終了した。年金保険料1,953億円を投じたグリーンピアの売却総額は、わずか約48億円であった。グリーンピアの廃止・譲渡が終了後、年金資金運用基金を廃止し、2006年4月に資金運用業務に特化した「年金積立金管理運用独立行政法人」を設立した。

余談であるが、こういうモンキービジネスと言っては猿が怒る様な愚行を繰り返している役所が、民間企業に対し上から目線で、定年、65歳まで延期求める等の主張を聞くと、良く言うよ!と思うと共に、つくづく日本は役人天国と実感する。

次に、増税であるが財務省の悲願である事は周知の事実である。しかしながら、個人的には極めて難しくなったと見ている。

このブログが公表されてしまったからである。

今日は「影の総理」とされる増税総司令官の勝栄二郎・財務事務次官に関するやり取りを公開したいと思います。この不況下で増税を強行しようとしている野田佳彦総理の背後で黒衣に徹しているのが財務省一家ですが、そのトップが住んでいるのが家賃激安の公務員住宅です。写真を撮りに行ってみましたが、一等地の高台のはなに城塞のように聳えたって、下々を睥睨するような12階建ての立派な集合住宅でした。あきれるというより、こんなところに住んでいながら、「民間社宅なみ」と強弁する神経には恐れ入ります。だいたい、大企業でもこんな一等地に250戸もの社宅を抱えるところはそうはありません。首都高速の音もこの高台のうえまでは届かず、閑静かつ景色のいい場所でした。これを役得とみる意識がまったく欠けているお役人に、「官のムダ削減はもう限界だから、あとは増税で税収増を図るしかない」と言う資格があるのでしょうか、というのが素朴な疑問です。

「李下に冠を正さず」と言う言葉があるが、今回の勝次官の高級公務員住宅使用問題は時節柄具合が悪過ぎる。来週以降、週刊誌やタブロイド紙がこぞって取り上げる展開を予想する。

実勢の家賃相場@30万円と、次官が支払っていると推定される@8万円の差額22万円は確かに家賃補助であり、民間は納税している。次官が支払っていないとしたら脱税(これは流石にないと思うが)、或いは財務省幹部の特権で免税適用と言う事だが、法的根拠はどうなっているのであろうか?

何れにしても、課税、増税に就いては透明性公平性の担保が必要で、国民感情を斟酌すれば、監督官庁、財務省のトップがこれでは話にならない様な気がする。

戦後の住宅難の時代に公務員住宅を建設した事は間違っていなかったと思う。しかしながら、遅くとも戦後半世紀を目途に廃止するなり、抜本的に縮小すべきであったのだ。今や大部分は公務員の既得権益でしかない様に見受けられる。

公務員住宅に対する、EXIT(出口戦略)の不在が、財務省悲願の増税にブレーキをかける事を予測する。

最後に、昨日の私の記事、長過ぎる学生生活の弊害に対し、現在筑波大学に在学中で来春より附属病院勤務予定の女性から頂戴したコメントを参照し、このテーマを考察してみる。

社会に出て体験する中で現場を知り、実学を身につけることも確かに大事だが、高校の勉強はより専門知識を身につけていくための基礎となるので、やはり勉学に集中した方が良いし、部活などから学べることもたくさんあると思うので、高1からの採用というのには疑問を感じる。ただ、確かに一般の大学生は明確な目的を持たず、流れに身を任せて遊ぶこと、楽しむことが目的のようにもなっているところはあるので、大学のあり方は見直すべきであると感じる。しかし、大学1年からその後の人生を決める就職をやすやすと決めていいのだろうか?もっと大学のうちに様々な経験をして知見を深めてから、自分の適性にあったことを探す方が学生の可能性は広がるのではないかと思う。早すぎる就活は、企業にとっては未来の社員を育てるために有意義かもしれないが、逆に学生の視野を狭める可能性もあるのではないか。

立派な大学でしっかり学び、学んだことで社会に直接貢献可能な職場を選択されただけあって、論旨もしっかりしており、何も批判する事はない。

敢えて、感じた違和感を述べさせて戴くとしたら、彼女は一旦就職した職場は当然長く務め続けるものと思っていると推測される点である。もしかしたら、終身雇用を前提に考えておられるのかも知れない。

一方、私はこれからの若者は職を得ても、3~5年で一旦退職し、Mark-to-market accounting、転職の節目ごとに自分の棚卸を実行し、時価を認識すべきと考えている。

即ち、初めての就職に際しても予め3~5年後の、EXIT(出口戦略)を設定し、それまでの達成目標や転職時の希望年収を確定しておくべきと考えているのである。

企業経営者が株式市場における自社の株価に責任を持つように、個人は労働市場に於ける自分自身の市場価値に責任をもつ時代に来ていると思うからである。従って、勤め先等は所詮自分の市場価値を上げる為の手段、道具に過ぎず、同じ物を永久に使い続けるなど有り得ないと考えるのである。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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