遠のくエジプトの春

2011年12月21日 09:00

アラブの春が成功するか、否かは、偏に、中東の大国エジプトが革命をあるべき方向に進め、政治と経済の近代化に成功するかにかかっていると考えている。

しかしながら、状況は余り好ましいとは言えない。群衆によるタハリール広場での抗議活動は、金曜日以来続いており、死者は昨日時点で13名と報告されている。


今朝のBBC記事のハイライトのみをピックアップしてみる。

_57395899_013545027-1bbc先ず、理解しておくべきは、19日にBBCが、抗議に参加した女性が上半身下着姿にされ、更に殴られる様子を放映し、米国務省の「恥ずべき蛮行である」とのコメントを流した経緯である。

On Monday, US Secretary of State Hillary Clinton accused Egypt’s police and soldiers of deliberately targeting women.Speaking in Washington, Mrs Clinton said that women were being humiliated in the same streets where they had risked their lives for the revolution.”This systematic degradation of Egyptian women dishonours the revolution, disgraces the state and its uniform and is not worthy of a great people,” she told an audience at Georgetown University.

米、国務省クリントン長官は、エジプト軍及び警察は特に女性を狙って攻撃しており、革命の為に命をかける女性が辱めを受けた。そして、かかる組織的なエジプト女性の品格を貶める行為は国家の恥であるとエジプトの軍関係者を厳しく非難した。

写真を見る限り、女性は上着を剥ぎ取られ下着一枚となり屈強な兵士数名によって広場を引きづり廻されている様である。右側の兵士は女性の腹を蹴ろうと左足を上げている。

この写真や動画は、あっと言う間に全世界に広まり、少なくとも女性達はクリントン長官のコメントを支持する筈である。結果、エジプト軍は厳しい状況に追い詰められる事となる。

しかしながら、今回の女性虐待は弁護の余地がないとしても、必ずしも軍のみを責めるのは如何なものかと考えている。

アラブの春を展開中の、他のアラブの旧共和国は大体似た様なものであるが、軍、ムスリム同胞団そして抗議の主体となる怒れる若者、この三者の関係が微妙且つ複雑である。

今回、批判の矢面に立たされている軍は目下の所、国を統治し治安の維持が可能な唯一の組織である。そして、選挙に関する限り、今迄の所、民主的な選挙を達成すべく努力をしている。

露骨に言ってしまえば、軍が治安維持を放棄した途端、エジプトは無政府状態に陥ってしまい、略奪や暴動が頻発する事になる。

次に、ムスリム同胞団であるが、エジプトの大部分の国民が敬虔なイスラム教徒である事や、過去に貧しい国民に医療や教育を無償で提供した事から選挙での圧勝が確実視されている。民主的な手続きによって国民に選ばれた政権与党となる訳である。

最後の怒れる若者が問題である。彼らが革命の主体として、ムバラク政権を崩壊に導いたのは事実である。そして、政治と経済の近代化を求めるのも決して間違っていない。問題は、古い政権を壊す事は出来ても、新たな政権を作り、運営する能力が皆無である、悲しい現実である。

従って、現在の彼らの行動は治安を乱し、民主的な選挙の妨害にしかなっていないのではと思う。Ganzouri 首相の、革命の意思に反すと言う批判もあながち的外れとは思えない。

良くも悪くも、エジプトはイスラムの国であり、独裁者を倒した後の権力の空白を埋めるものは、イスラム原理主義への傾倒のリスクはあるにせよ、ムスリム同胞団しかないのだと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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