私が否応なく自炊を選択した経緯と新たな発見 --- 関口 州

2011年12月24日 10:07

今回、何人かの有名著者達が自分たちの本をスキャンして電子化する行為、「自炊」を代行するサービスを行う複数の法人に対して文書でのサービスを停止するよう通告したが、それに対して今後もサービス提供を続けると回答した2社に対して法的な措置をとった。

私も実際に自炊の経験があるが、私はどちらかというと紙が好きな人間だ。新書を開いた時の匂いやページをめくる音が好きだし、本棚に並ぶ本を眺めるのも好きだ。

そんな私が自炊に至った原因は私のライフスタイルにあった。

既に持ち家があり、自分の書斎を持っているような方々にはあまり大きな問題ではないかもしれないが、私のように30代で持ち家も無く、頻繁に引っ越しをするような場合、本の保管費用と移動費用は非常に大きな問題になる。

本を電子化するまでは数を増やさないように、引っ越しの度に捨てたり売ったりしていたが、文庫本を除いて400冊くらいはどうしても手放したくない本があった。それでも引っ越しが関東内に限定されていたので、苦労はしたがなんとか凌いでいた。

だがある時、関東から沖縄に引っ越すことになったので、引っ越し業者に見積もりに来てもらったところ、今までの引っ越しにかかっていた額の5倍以上の金額を提示された。沖縄への引っ越しはコンテナを使って海上輸送をするため、トラックと違い荷物の量がとてもシビアになるという事であった。
それを聞いて私と妻は渋々荷物の取捨選択をする事となり、私の本はイケアで買ったばかりの寝心地の良いベッドと共に輸送不可と判定された。
ベッドは諦められても本は諦めらないので、引っ越し荷物とは別に宅急便で送ろうと考えたが、想像していた料金とケタ違いの費用がかかる事がわかり、これも断念。そして否応なく自炊という選択肢に至る事になった。

私は現在タイに住んでいるが、日本からタイに本を全部送るとなっていたならば、それこそ目玉の飛び出るような費用がかかる上に、タイは郵便事情が悪く途中で紛失するリスクも大きい。

時代は変わり、多くの現代に生きる人々のライフスタイルも変わり、大切な本を全て手元に置いておくことが難しくなってきている。
その後、電子化された本を読んでいて、紙の本では得られなかった経験をしている。
本を読んでいると、たまに気になるキーワードに遭遇することがあるが、そういう時にはその場でWikipediaでキーワードを検索して概要を確認してから本を読み進める事にしている。
すると稀に、前にも読んだ事のある内容だなというものがある。

紙の本の場合にはそれで終わりなのだが、本が自炊で電子化されていてOCR(光学文字認識)を使ってテキスト化された文書が埋めこんであれば、電子化されたすべての本の全ての文を一瞬で検索することができる。
検索して、気になったキーワードがどの本に書かれていた内容かがわかると、その本の概要が頭に蘇り、今読んでいる本をより深く、より多面的に読み進めることが出来るようになる。
電子化された本であれば、複数の本を3次元的に繋げて、自分なりの書籍マップを作る事も可能だろう。
それに自分の考えを繋げて他人と共有出来るようになれば、知識の深まりや議論の促進などにも大きく貢献するはずだ。

私は本が好きでそれを書いた著者の皆さんを尊敬しており、また感謝もしている。だが著者が読者に対して、作品をどのような形で所有しなくてはならないかを押し付けるのは間違っていると考えている。
コンテンツのデジタル化の流れは止めようもないと考えれば、そのような行為は長期的にデジタルコンテンツ市場で占める本のマーケット規模を縮小させてしまう。

であればこそ、今のうちに著者の皆様には紙媒体による所有に伴う読者の保管・移動費用の増加、また電子化されたコンテンツから生まれる新たな可能性に関して一考頂き、電子化促進よる本という素晴らしいコンテンツのさらなる発展に寄与して頂きたいと私は願っています。

関口 州
フリーランス

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