小さな単位から変えていく時代のはじまり

2012年01月02日 13:27

さて、年末に「変わる勇気 変える勇気」のタイトルで一年の最後のブログを書いたわけですが、日本が変わっていかなければならないことは、誰もが肌で感じていることだと思います。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 変わる勇気、変える勇気 – :
新年の日経の社説は「転換期日本」のタイトルが掲げられていました。そのとおりだと思います。そして、「日本は今悩んでいる。日本はどこへ行くのだ。日本は何をするのだ。日本はどうなるのだ」という書き出しではじまる『転換期の日本』を紹介しています。この本が出版されたのは、世界恐慌があった1929年だったといいます。しかも当時の帝国主義の時代は第1次グローバル化の時代ともよばれるそうです。
ただ、いま私たちが直面しているのはグローバル化という現実だけではありません。工業化から情報化という激流も加わり、社会や経済の複雑さが増しはじめ、日経社説がいうように「多元方程式」を解いていかなければならない時代になってきています。


変わる、あるいは変えるために重要なことは、問題の立て方を変えることだと思います。複雑さを増した時代に、すべてを満たす解決を求めても、なかなか現実的な解は得られません。しかも、現代は、確実にこうなるとはいえない時代です。あるいは、どのような問題でも、あちらを取れば、こちらが立たずのいわゆるトレードオフの関係がからみ合っており、しかもなにかを行った結果が見えないために、調整も難しくなります。

たとえば、新しい原発施設の建設が現実的には困難になり、原発への依存度は下がっていきます。脱原発の声は高まってきていますが、しかし、再生可能な自然エネルギーによる発電で原発を代替することは、そうとう長期にイノベーションを積み重ねない限り不可能で、実際には天然ガスなどの化石への依存度が高まります。それはとりもなおさず、日本のエネルギーの安全保障としては極めて高いリスクを背負うことになってしまいます。

原発を止めれば、原発事故への不安は解消しますが、しかしかといって止めれば問題が解決するわけではなく、廃炉への巨額な負担は避けれません。さらに資源を持つ国は、またマーケットは日本の足元を見るために、極めて不利な状況に甘んじることになります。経済のリスクだけでなく、国際的な政治のリスクも背負うことを覚悟しなければなりません。しかし、そのリスクがどうやってくるかはなかなか予測できない問題です。やはりあちらを取れば、こちらが立たずなのです。

いずれを日本が取るのか、あるいは取れるかも見えていません。しかし、できるだけ電力を使わない、世界でもっとも省エネ技術や産業を生みだすことに問題を立てれば、現実的な解が見えてくるのではないでしょうか。また新年の「朝までテレビ」でやっていたように、脱原発であっても、脱原発依存であっても、除染の問題だけでなく、核燃料の廃棄システムをつくりだすことは不可避の問題で、さらに世界が共通して抱える課題で、そちらをどうするかに問題を立てれば、現実的な対策も生まれてきます。

つまり、自然な成り行きに任せればトレードオフの関係がいつまでも残るわけですが、対象や問題を小さく分解して、できることを発見していくというアプローチです。

硬直した政治を変えると言っても、現実的にはかつてのように、東西冷戦の代理戦争のような保守と革新で争う時代ではなくなりました。理念や主張でほとんど違いのない政党が、争点を失い、あるいは争点がどんどん矮小化されていき、しだいに選挙のための互助会的な組織になっていくことも自然な流れです。それを変えることは、現在の政党に期待することは難しく、変わらないから、いくら政治主導を唱えても、明治の時代から日本を統治し、網の目のように絡んだ官僚による統治、また官僚利権を崩すことはできません。

しかし、地方行政、小さな単位から変えることに問題をたてたとたんに、大阪のダブル選挙による維新の会への支持が広がり、閉塞していた大阪に変化の芽が生まれたのです。なにを変えるかの焦点が明確で、府民や市民からも合意を得やすく、また市の職員にとっても目標がわかりやすいために、やっと利権を囲い込む組織から、改革を促進するために働く組織と変わる好機も生まれました。大阪が大きく変わっていく善循環がやっと見えてくるようになりました。

マーケティングの世界は、嗜好や価値観、またライフスタイルが多様化し、市場が複雑化した時代に選んだ戦略が、セグメンテーションという発想でした。すべての人々が満足する解決ではなく、小さな単位で市場を分けて問題をたて、人々の満足を最大化するというイノベーションでした。

産業も「規模」や「総合」を追及する時代、またやわずかなシェアの優位を競い合う時代ではなくなりました。消費者や顧客にとっての価値をどう広げる、そのためのイノベーション競争の時代になってきています。それはひとりひとりのユーザーを起点に、その生活がどう変えることができるか、つまり考える単位を最小化し、価値を最大化することに問題をたてることで可能になってきます。

この一年は、そういった問題のたて方を変える動きが広がる一年であって欲しいものです。戦略は問題をたてるところからスタートし、問題のたて方を変えたときに戦略転換がはじまるのです。小さな単位で大きな成果が生まれた時に、「変わる勇気、変え勇気」も生まれてきます。まずは、そういった問題解決の方法を創造し、実際の成果がみえはじめたときに、それが時代の空気となり、日本も大きく変わっていくのでしょう。


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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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