グローバル化の行き着く先

2012年01月07日 14:50

グローバル化により、新興国と先進国が経済的な結びつきをかつてないほど深めている。 その中で、現在、先進国はほぼ例外なく深い経済不振に喘いでいる。共に経済発展するはずが、なぜこのようなことになっているのだろうか。


この原因は、食糧、エネルギー、資源の有限性と環境制約に求めることができる。我々が直面するのは、地球の有限性である。実際、2000年には1バレル30ドル未満だった原油価格は、現在1バレル100ドル近くになっているし、中国も食糧輸入国に転じている。食糧価格も上昇している(添付のグラフ参照)。我々を取り巻く有限性の問題は既に顕在化しているといってよい。

2つのシナリオ

グローバル化により 新興国の経済成長 > 先進国の経済成長 という構図は全体として変わらないと思われる。このような仮定の下では、新興国の生活水準が上昇する一方で、先進国の生活水準は相対的に低下してゆく。

ところが、先進国の人口に比べて新興国の人口は10倍程度と圧倒的に多いので、新興国の生活水準が上がるということは、単純に考えて、食糧、資源、エネルギーの消費の増加圧力になる可能性が高い。人口の伸びだけでなく、生活の質の上昇が、これらの消費の増加をもたらす。現在、地球上の全人口が現在の先進国並みのエネルギー消費や食生活をした場合に、それを支えるだけの資源、エネルギー、食糧生産力は、現在の地球上には存在しない。

従って、グローバル化の進展に伴って、次のいずれかが起きる。

シナリオ1:  先進国の生活水準が下がり、新興国の生活水準が上がり、ある程度のところでバランスする。

シナリオ2: 先進国の生活水準が下がり、新興国の生活水準が上がるが、ある時点で食糧、エネルギー、資源の価格上昇が経済力の弱い国の困窮化を招き、大量の難民を生む。

シナリオ1の場合は、先進国の生活水準は相当な省エネルギー、省資源化を行わない限り、かなり低下すると思われる。 

シナリオ2の場合は、大量の難民を受け入れる国がなければ、世界は混乱する。資源や水、食糧を巡り大きな紛争が起きる可能性が高い。

世界の有限性と経済成長の制約要因

世界の耕地面積の限界と耕地の生産性の限界により、世界人口の上限は規定される。こういった有限性は、20世紀末まではあまり意識されることはなかったが、70億人の人口は、地球の定員を遥かに超えている。2030年までに80億人に達する人口を養い、その食生活を改善するには、世界の食糧生産を倍増する必要があると言われているが、その一方で土壌劣化の影響を受けている農地も多く、砂漠化も進んでいる。さらに人口一人当たりの穀物収穫面積は世界平均で現在10アールほどしかない(FAO調べ)。また新規の農地の開拓も多くは望めないのが現状である。とても20年で収量を倍増する方法があるとは思えない。

既にアフリカは森林破壊、過放牧、気候変動の影響などで環境問題が顕在化し、環境難民を抱えており、今後も環境難民は増加し続けるだろう。食糧価格の上昇は人口増加が続く限り続くと考えてよい。これ以上この状態を続けるなら、まず経済力の弱いサハラ以南のアフリカ諸国が食糧輸入が困難になり、ついで経済力の弱い新興国、やがては先進国にも波及し、大きな問題になるだろう。 国際紛争の種にもなる可能性が高い。

一方、化石燃料の埋蔵量にも限界があるが、さらに二酸化炭素の排出を抑制しなければ、温暖化が進み、食糧生産や水の確保に支障が出る可能性が高い。 

経済成長の制約要因として次の3つを挙げることができる。
 
(1) 資源、エネルギーの有限性 (2) 食糧生産の有限性  (3) 環境破壊の深刻化 

これらの問題の現実的な解決方法は、新エネルギーの開発といった方法も考えられるが、核融合といった革新的なテクノロジーが実用化しない限り二酸化炭素排出の問題がクリア出来ず、環境破壊が進む可能性が高い。今のところは原子力に頼るのが現実的だろう。 食糧生産の劇的な増加はバイオテクノロジーを駆使しても望めないだろう。 環境を人間がガーデニングのようにコントロールするのも不可能だ。 最も現実的なのは、人口抑制だと思われる。

社会システム変革の必要性

このように有限化する世界において、先進国の経済成長は今後も大きくはならないし、先進国の生活水準は低下し続ける可能性が高い。先進国では経済成長を前提とした社会システムは維持できない。 どのようなシナリオを辿るにせよ今までのようなライフスタイルは維持できない可能性が高い。 近い将来、穀物中心の菜食主義的な食生活に移行することも止むを得ないかも知れないし、海外旅行も難しくなり、その代わりに海外の情報を容易に手に入れることで満足することになるかも知れない。 しかし、それでも現在70億人の世界人口が曲りなりにも平和裏に生活を続けるには、持続可能な世界を実現するために、ある程度の我慢をせざるを得ないだろう。 それとも、我々は億単位の人が餓死するような、世界の不安定化を望むのだろうか。

参考文献:「文明崩壊への警告」Jared Diamond (インタビュー2012、朝日新聞2012年1月3日)

4710


アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑