生活の中の想定外と金融市場における想定外

小幡 績

金融市場における想定外とは何か

これは面白い問だ。

いつもいろいろコメントをいただくが、あるコメントが興味深かったので紹介しよう。

昨年1年間の出来事を振り返って欲しい。大震災、津波、原発事故、アラブの革命、欧州の金融危機、これらは全く想定不可能な事象だ。

私は、この意見に反対だ。


まず、アラブの革命と、欧州の金融危機。これは100%予想された出来事だ。

欧州の金融危機は言うまでも無い。リーマンショック後、ここまでの金融市場の出来事は100%予想されたシナリオ通りに進んでいる。予想外なのは、ここまで予想通りに進んだことだ。

アラブの革命も、リーマンショックと食料高騰のダブルパンチの結果、予想されたこと。あれは、本質的には、経済暴動。職を失い、食糧不足に陥った都市部の若年層が暴れた、ということで、リーマンショック、代替資産としての商品作物への資金の移動の必然的結果だ。

さて、大震災、津波、原発事故。これらは予想されてなかった出来事としよう。

予想されていなかった出来事が起きる、というのはどういう意味を持つか。

金融市場に関して言えば、何の意味も持たない。

これが金融市場の特徴だ。

事件はすべて、投資家行動として処理される。

したがって、どんな事件が起きようが、投資家が行動しなければ、つまり、売買をしなければ、金融市場においては何も起きない。

これこそが金融市場の本質である。

したがって、行動ファイナンスは正しく、行動を考慮しない現代ファイナンスは誤りなのである。