原子力とエコロジー

2012年01月29日 18:42

エコロジストというとグリーンピースを思い浮かべる人が多いかもしれないが、私はグリーンピースをエコロジストとは思っていない。 

真のエコロジストであれば、鯨の保護を訴えることより、核融合の研究費の増額や、トリウム溶融塩原子炉の研究、さらには、人口抑制の方法論の研究推進などを訴えるはずだからだ。 


エコロジーの定義

エコロジーとは何だろう? エコロジーとは、人間が環境負荷を小さくして生活することだ。 真のエコロジーとは、例えば、人口を少なくして、都市に人口を集中させ、コンパクトにエネルギー効率よく暮らすといったことだ。だから鯨を護れ、ホッキョクグマを護れということも、エコロジーには違いないが、枝葉末節に過ぎない。

化石燃料と炭素循環の攪乱

現在は化石燃料はエネルギーの中核だが、化石燃料を使い出す前は、エネルギーも土地利用により生み出していた。日本の場合で言えば薪炭林から薪や炭を生産し、移動に使う馬を養うのに採草地を持たねばならなかった。 食糧生産も化学肥料や耕作機械もなかったから、土地の生産性は低く、一人の人間が生きてゆくために、広い土地を必要とした。

世界人口が急激に増加したのは、石炭、石油といった化石燃料の利用が始まったからだ。しかし、その化石燃料の使用にも問題点はある。それは炭素循環を攪乱するということだ。 

石油、石炭、天然ガス(シェールガス、メタンも含む)などの化石燃料は、どのようにして生まれたのだろうか。 実は白亜紀には現在よりも二酸化炭素濃度がずっと高く温暖であったのが、それらの大量の二酸化炭素は地質時代に大部分が生物体を通して、深層海底に落下したり、地層に閉じ込められ、炭化水素や炭酸石灰に形を変えて蓄積され、二酸化炭素は減少し地球は冷やされることになったのである。 そしてその閉じ込められた炭化水素が今我々が使っている化石燃料なのである。

従って化石燃料を使うことは、生物が営々として蓄積して来た炭素を大気中に二酸化炭素として再び放出することに他ならない。現在、70億人に達する世界人口を支えているのは、化石燃料であることは紛れもない事実である。実に一人当たり年数トンもの二酸化炭素を排出しながら我々は生活している。

その結果として、二酸化炭素濃度は上昇を続けている。 こういった人為的に放出される二酸化炭素は大気と海との炭素循環により循環し続けるが、放出される量が多ければ、大気中の二酸化炭素は増え続けることになる。 これが、気候変動を起こしていると考えられているわけである。 我々は大気の組成を急激に変えるという壮大な実験を行っていることになる。 

化石燃料からの脱却に原子力は必要

エコロジーを実践するには、人為的な炭素循環の攪乱を低下させる必要がある。

炭素循環を攪乱せずにエネルギーを得る方法は、大別して二つある。 その一つは再生可能エネルギーといわれるもので、太陽エネルギー、地熱、風力を回収してエネルギー源とするものであリ、もう一つは原子力(将来的には核融合も?)である。 バイオエタノールや、藻類による燃料の生成も、形は変わるが太陽電池と同じく、やはり太陽エネルギーを回収していることになる。 

しかし、問題はこういった再生可能エネルギーはエネルギー密度が非常に小さいので、効率的にエネルギーを取り出すことがなかなか難しいことである。 これは考えてみれば当たり前で、化石燃料は生物が数千年、数万年といった長い年月をかけて蓄積して来た炭素を一瞬にして燃焼させてエネルギーを得ているのであるから、原理的に化石燃料にエネルギー密度では適うはずがない。再生可能エネルギーを得るには、どうしても膨大な土地が必要である。数字の上では太陽電池をサハラ砂漠に敷き詰めれば、世界のエネルギー需要は賄えるが、電力を貯蔵したり、送電するのは中々大変でロスも大きい。 

エコロジストが原子力を全否定するのであれば、世界人口を再生可能エネルギーで支えることが出来る範囲に減少させるしかない。 それが今すぐには無理なのは明らかなのだから、当面は原子力に頼るべきである。

エコロジーを本当に実践するには、電気自動車の普及くらいでは追いつかない。 エコロジーを自己満足を超えて実践するつもりがあるのなら、原子力を推進するべきだ。 福島第一原子力発電所の事故は不幸ではあるが、経済だけでなく、エコロジーの観点からも原子力の利用を進めるべきだろう。 気候変動の危険性の方が、原子力の危険性より遥かに大きいからだ。

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