ダメな政策の見抜き方-ファンド編-

高橋 正人

近年、各省の政策にやたらと「ファンド」という文字が目立つようになった。例えば、2012年度には、農林漁業向けやPFI支援のファンド等が立ち上がるようだ(注1)。「ファンドをつくれば、何とかなるだろう」といった、やや見切り発車的な空気を霞ヶ関・永田町に感じる。

しかし、ファンドは「魔法の箱」ではない。うまく機能する仕組みを設けない限り、「ただの箱」に過ぎない。ところが、政策の中身をよく見ると、機能する仕組みを確保できているのか疑問に感じる政策ファンドも少なくない。

そこで、「政策的なファンドがうまく機能するのか」をチェックする際のポイントについて整理してみたい。


1.チェック・ポイント
「誰が出資するのか?」、「誰が運用するのか?」、「どうやってリターンを出すのか?」といった三つの観点から、適切な制度設計について確認してみよう。具体的には、以下のような点が重要ではないか。

(1)投資家~誰が出資するのか~
 1-1
  運用者自身も個人資産を出資しているか?
  (損失を出すと人生設計に影響が出るくらいの額が理想)
 1-2
  その他、案件の発掘者などファンドに関わる主体が出資しているか?

(2)運用方法~誰が運用するのか~
 2-1
  実績のある専業のプロが運用するか?
  (省庁や民間からの出向者(サラリーマン)は絶対×)
 2-2
  上記のプロが途中で辞めづらい契約・仕組みになっているか?
 2-3
  意志決定に独立性が保たれているか?(省庁の介入はないか?)

(3)案件~どうやってリターンを出すのか~
 3-1
  案件発掘の仕組みは構築されているか?
  (例えば、1-2のようなインセンティブ設計等)
 3-2
  出資後に何をするのか?それは実現可能なのか?
 3-3
  EXIT戦略は適切か?
  (買うだけなら誰でもできる。売却して初めて実績と言える)

上記のような点がうまく制度設計されているのかを注視すれば、そのファンドが十分に機能するか否かは事前に予見できる(成功するファンドを見抜くのは難しいかもしれないが、少なくてもダメなファンドはわかる)。

2.具体例
農林漁業向けファンドを例に見てみよう(注2)。

なお、このファンドは、農林水産業(1次産業)を食品加工(2次産業)や流通・販売事業(3次産業)と連携させるため、農林漁業者等に出資及び経営支援を行うことを目的としている。我が国にとって農林漁業の生産性向上は重要な課題であり、政策目的だけに注目すれば非常に綺麗に見えるが、ファンドがワークするかどうかは全く別問題である。

(数字は上記のチェックリストに対応)
 1-1:未定。
 1-2:金融機関、地元企業、JAなどの出資も想定。

 2-1:未定。今後人選。
 2-2:未定。
 2-3:未定。今後、詳細を詰める。

 3-1:金融機関、地元企業、JA等からの持ち込みにも期待(?)
 3-2:ハンズオンを企図。しかし、人選はこれから。
 3-3:10~15年程度。売却先はよくわからない。

以上の通り、制度設計の詳細はこれから検討・決定するようだ。したがって、今のところ、うまく機能するファンドとは到底言えない。しかしながら、このファンドに対する国の出資は、既に閣議決定されており、国会審議を経れば正式にオーソライズされてしまう状況である。

仮に、民間のバイアウト・ファンドやベンチャー・キャピタルが「とりあえず、ファンドの大まかなコンセプトは決めました。チームメンバーの募集やスキームの設計は後からやりますので、取り急ぎ出資をコミットしてもらえませんか?」などと言っても、出資を約束する機関投資家は絶対にいない(というか、一瞬で追い返されるだろう)。

チェックリストに書いたような論点もクリアーできていないファンドに出資を約束するのは、大切な国富の運用を白紙委任することに等しい。是非とも、ファンドの適切な仕組みづくり(人員の確保、インセンティブ設計等)に力を注いでもらいたい。

(注1):
「日本再生の基本戦略」及び「平成24年度財政投融資計画」(ともに2011年12月24日閣議決定)を参照。

(注2):
財政投融資分科会(平成23年11月15日開催)の議事録と会議資料を基に記述したため、現状では制度設計が進んでいる可能性はある。

高橋 正人(@mstakah)