財政破綻した欧州の落ちた地獄 - 『ブーメラン』

2012年02月04日 17:34

ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくるブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる
著者:マイケル・ルイス
販売元:文藝春秋
(2012-01-25)
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★★★★☆


サブプライムローンでCDS(債券保険)を大量に買って数十億ドルの利益を上げたヘッジファンドのトレーダー、カイル・バスは、次の標的を欧州の国債に定めた。2009年に11ベーシスポイントだったギリシャ国債のCDSスプレッドは、2011年には2300ベーシスポイントまで上がり、彼のギャンブルはまた当たった。そして彼が次に大量にCDSを買っているのは、日本とフランスの国債だ。

著者はアイスランド、ギリシャ、アイルランドを取材し、なぜ彼らが無謀な借り入れをしたのかをさぐり、国家が破綻すると何が起こるのかを描く。人口30万人のアイスランドでは、全国民が投資銀行家になり、莫大な借金をして証券化商品を買い、バブル崩壊で1000億ドルの損失を出した。この後始末は政府がするので、政府債務はGDPの8.5倍にのぼる。

ギリシャは脱税や地下経済が当たり前の国で、公務員の給料は民間の3倍だが、それでも賄賂が横行している。政府にも企業にも正確な帳簿がないので、どれだけ赤字が出ているのかわからない。土地登記もないので、地価も把握できない。それでも公務員の賃金を下げ、公的年金を減額する法案に対してゼネストが起こり、銀行に火をつけた。

こうしたPIIGSと呼ばれる国々は、IMFの「銀行管理」下に置かれ、きびしい緊縮財政と債務削減が行なわれているが、まだ危機の終わりは見えない。ギリシャがユーロ圏を離脱してデフォルトに陥るまで決着がつかないという意見が多いが、問題は借金を踏み倒しても彼らが立ち直れるのかということだ。国民は労働意欲を失い、企業は海外に逃げた。経済が再建できなければ、国家は衰退してゆくしかない。

これは未来の日本の運命だ。ギリシャとアイルランドとイタリアの合計より大きな政府債務を抱え、毎年1%ずつ労働人口が減る日本が破綻したときの地獄は、もっと苛酷だろう。メガバンクも暴落に備えて逃げ始めた。ところがギリシャでさえ年金を減額するのに、日本の民主党政権は「最低保障年金」を増額するという。彼らの頭は大丈夫なのだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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