「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)「反原発」の不都合な真実 (新潮新書)
著者:藤沢 数希
販売元:新潮社
(2012-02-17)
販売元:Amazon.co.jp
★★★★☆
著者は「アゴラ」の執筆者で、某外資系投資銀行のトレーダーである。彼のブログ記事は私の記事とよく似ているが、別に打ち合わせて書いているわけではない。本書の内容も私の『原発「危険神話」の崩壊』とよく似ているが、これは「物事を正しく理解している人は同じように正しいが、バカはそれぞれにバカである」というトルストイの法則によるものだろう。

本書の中心的な主張は、「原子力で命を守りたい」という記事にも書かれているように、原発のリスクは人命についても環境汚染についても火力よりはるかに小さいということだ。これはWHOもOECDも多くの研究者も認めている通説であり、OECD諸国では原発事故による死者は(福島を入れても)歴史上1人も出ていないが、石炭火力による死者は(炭鉱事故と大気汚染を含めて)毎年10万人以上出ている。本書も指摘するように、石炭火力こそ最悪のエネルギーだというのが世界の専門家の常識である。

「経済より命が大事だ」などと両者がトレードオフにあるかのような主張も間違っている。GDPと平均寿命には相関があり、信用不安の起こった1998年に日本の自殺率は35%も上がって3万人を超えた。「電力は足りるのだから原発の再稼働は必要ない」と言っている人々は、経済が悪化して失業や倒産が増えることが多くの人命を奪うことを理解していない。

本書に引用されているデータは、GEPRでも紹介している査読つき学会誌や公共機関のもので、専門家のチェックを受けている。これに対して「福島事故で40万人死ぬ」などというデマは、反核団体のウェブサイトに書かれている落書きみたいなものだ。放射能ママは「危ない情報」を探し求めて一番危ない情報を信用するきらいがあるが、情報リテラシーを高めて、せめて本書ぐらいの基本的な常識を身につけてほしい。

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