最小限の憲法改正案

2012年02月18日 11:16

waf12021409260007-p1大阪維新の会の提案した「維新版・船中八策」の骨子が話題になっているが、奇妙なことにその文書がネット上にはどこにも見当たらない。タイトルも「維新八策」となっていたりして実態がよくわからないが、産経新聞に紹介されている図のような政策だと考えると、かなり大ざっぱなもので、実現可能性はゼロに近い。

特に疑問があるのは、首相公選や参議院の廃止など、憲法改正の必要な問題を他の政策と無造作に並べていることだ。これを実現するには衆参両院の2/3で発議して国民投票で過半数が賛成しなければならない。これは他の政策とは比較にならない難問で、特に参議院の廃止に参議院が賛成することは考えられない。


これについては前にJBpressでも論じたが、最低でも憲法第59条の第2項を改正して、衆議院の過半数で再可決できるようにすることが必要である(選挙制度でやれないこともないが不十分だ)。もちろん、これにも参議院が反対するだろうが、民主・自民両党が賛成すれば両院の2/3になる。憲法改正の発議を「両院の過半数」とする第96条の改正には、あまり異論が出ないだろう。

首相公選についてもアゴラで論じたことがあるが、実質的には大統領制と同じ二元代表制であり、「ねじれ」を増やして意思決定を複雑にするだけというのが政治学の通説である。むしろ現在の議院内閣制を徹底し、局長以上の官僚を政治任用とするなど、公務員制度改革で内閣の官僚機構に対する支配力を強めるほうが現実的だろう。

「統治機構の再構築」が改革のコアだという維新の会の認識には賛成だが、それなら他の政策と並列するのではなく、憲法改正にからむ部分をもっと現実的な形で提案し、それを実現する戦略を示したほうがいい。国会で多数決が機能しない限り、年金制度や地方交付金などの異論の多い改革は不可能である。

憲法改正というと、第9条をめぐる泥沼の論争になって決着がつかないが、こうした手続きの改正だけに限れば合意は可能だろう。今のまま国会が何も決められない状況が長期化すると、政治は壊死してしまう。民主・自民が協力して、憲法第59条と第96条の改正だけを問う国民投票をやってはどうだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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