公的医療保険に禁煙割引を導入してほしい(追記あり)

井上 晃宏

タバコが体に良くないことは、誰でも認めるところだ。しかし、タバコ販売を全面禁止すべきという主張には賛成できない。人は健康のために生きているのではない。どんなに有害な嗜好品でも、その有害性を知らされた上で摂取するならば、それを嗜む自由はある。個人的楽しみのために、病気になったり死んだりする自由はある。


問題は、公的医療保険が強制加入であり、医療支出が共有化されていることにある。タバコのために病気にかかると、その治療費の大半を他人が負担しなくてはならない。これはどう考えてもおかしい。

民間医療保険には、禁煙割引がある。コチニン(ニコチン代謝物)を唾液から検出し、喫煙しているかどうかを判定した上で、禁煙者の保険料を割り引くのである。言い換えると、喫煙者には、喫煙によるコスト増加を反映したプレミアム料金を払ってもらう。

同じことを、公的医療保険でもやってはどうだろうか。世帯単位で保険料を払っているといっても、全員を試験する必要はない。世帯主限定でコチニン試験をやればいい。間接喫煙でも、コチニン試験は陽性反応が出ることがあるので、世帯主をコチニン陰性にするためには、同居家族全員が禁煙しなくてはならないからだ。

禁煙割引を公的医療保険に適用すれば、禁煙世帯の保険料が安くなるのみならず、禁煙のインセンティブになる。罹病率低下のために所得が増加するので、GDPも増えるだろう。タバコによる病気の経済的被害がもっとも甚大なのは、稼ぎ頭である世帯主なのだから、世帯主の禁煙だけでも、充分に経済効果はある。

同様の政策を酒についても行うべきだが、アルコール摂取歴を正確に検査する技術がない。コチニン試験のような技術開発が望まれる。

twitterで、「デブ割増はどうなんだ」という声があったのでお答え。
すでに、医療保険料のデブ割増は行われている。いわゆるメタボ検診(胴囲、血圧、血中脂質、血糖値、喫煙習慣)の実施率、特定保健指導率、メタボ該当者減少が達成されない保険組合、市町村健康保険、共済組合に対しては、補助金削減というペナルティが課せられる。その分だけ、保険料が値上げされるので、結局、デブ割増になっている。しかしながら、保険組合丸ごとの財政ペナルティでは、動機づけが弱く、効果は薄いと思う。世帯ごとに行うべきだ。