エリアワンセグも無駄に終わるだろう

山田 肇

羽田空港で「羽田空港エリアワンセグ」という放送サービスが提供されているのをご存じか? 空港内のレストランやショップを紹介する番組が視聴できるという。羽田を結構利用している僕でも今日まで気付かなかったのだが、空港内に利用を誘導する掲示はあるのだろうか。

携帯電話を次のように操作し利用するのだそうだ。(羽田空港エリアワンセグサイトの記述)

アンテナを立てます。ワンセグを起動、受信エリアを「東京都(関東)」にして、1chの「NHK(総合)」に合わせます。右カーソルを長押すると、スキャンが始まります。新しいワンセグ放送局がみつかり、視聴開始します。

ふーむ、エリアワンセグはチャンネルをスキャンしないと見つからないのか。


電波部はそんなエリアワンセグを推進している。「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」が2010年7月に出した報告書に基づいて、テレビ帯ホワイトスペースの用途の一つに位置付けられたからだ。地域コミュニティの情報発信手段などに活用でき、諸外国にも送信機及び受信機をセットで展開し、我が国の国際競争力向上に寄与したいという。

検討チームは「ホワイトスペース特区」の創設を提言し、先行モデルが選定された。羽田はその一つである。先行モデルには、他にもエリアワンセグが並んでいる。しかし、エリアワンセグがあるかないかわからない旅行先で、旅行者はいちいちスキャンするだろうか。地元の人々も利用するだろうか。

NOTTVの記事で指摘したが、官主導の時間のかかるプロジェクトは情報通信産業分野では失敗の可能性が高い。エリアワンセグも無駄に終わるだろう。

空港内で様々な情報を発信するのはよいことだ。対象をワンセグ受信機だけに限定するのが間違いなのだ。スマートフォンを含めあらゆる端末に対して情報発信するように改善しなければ、羽田空港エリアワンセグに未来はないだろう。

それにも増して問題なのは、こうして電波資源が無駄遣いされることだ。テレビ帯ホワイトスペースは「プラチナ」と呼んでもよい貴重な周波数帯であり、無駄は許されるものではない。

山田肇 -東洋大学経済学部-