シャープに観る一本足打法の終焉

2012年02月29日 09:39

つい先ほど知ったのであるが、液晶テレビ「アクオス」で一世を風靡したシャープが大変な事になっている。何と、シャープは過去最悪の最終赤字に “屋台骨”テレビの消沈で生存の岐路との事らしい。

2月1日修正後の会社計画は、売上高2兆5500億円(前期比15.6%減)。営業損益ゼロ(前期は789億円の黒字)。純利益は新たに1200億円の繰延税金資産取り崩しを迫られ、2900億円という巨額赤字(前期は194億円の黒字)に陥る。従来の会社計画に比べ、売上高で2500億円、営業利益で850億円。純利益で2960億円の下振れとなった。11年10~12月期(第3四半期)決算の低迷からみて、東洋経済ではこの会社数値ですら実現は厳しく、再下降する余地があると考えている。

会社発表は2900億円の赤字との話であるが、この記事を読む限りでは底なしで、何処まで赤字が拡大するのかさっぱり判らないし、更には堺の最新工場の減価償却が終わっておらず、稼働率が5割を切っているとの事であるから来期は巨額の減損処理に迫られる事になる。

他人事だから言えるのであるが、踏んだり蹴ったりとは正にこういう状況を描写するのに使うのであろう。

それでは、一体経営の何処が拙くてシャープはかかる惨状に陥ったのであろうか?

国内で生産し、国内で販売すると言う一本足打法に拘り過ぎた結果と思う

シャープに限らず、殆どの国内製造業が苦戦しているのは事実である。そして、その原因は飽く迄ざっくりとした話であるが、下記3点と思う。

先ず第一に、「デフレ」に依り商品価格は絶え間なく下落するという、製造業に取っては誠に厳しい現実である。

32インチで2万円台のテレビが市場に出回った。結果、シャープの国内テレビ事業は10~12月期には営業赤字に転落。テレビ事業の収益のほぼすべてを国内で稼いできた同社にとっては、影響甚大である。

この記事が全てを表しているのではないか?

第二は、政府の為替政策が無策な事から「円高」トレンドに陥り、海外市場での価格競争力を喪失した事である。エルピーダメモリ破綻の大きな原因である事は間違いない。

最後は、「解雇規制」の厳格な運用に依るコストの硬直化である。ちなみに、シャープ堺工場の稼働率が5割を切っているとの事であるから、人員も5割に削減出来れば莫大な人件費削減が可能な筈である。

シャープの様に国内生産に拘り、国内市場を金城湯池として来た、謂わば「一本足打法」の製造業の軸足を、上記3点のディメリットが鋼鉄の玉となり、直撃しているのである。

それでは、日本の製造業は嘗て栄華を誇った「恐竜」の如く絶滅してしまうのであろうか?

大変残念な話であるが、どうもこれからの時代は「恐竜」が生き残るには厳しそうである。

生き残る為には、コンパクトで賢明な「人類」に変身する必要がある。

最近、友人から教えて貰った話であるが、Canonの海外展開は参考になると思う。

先ず、中国華南地域で実績を作り一定のサプライチェーン構築に成功した後、ハノイ市郊外の工業団地に大規模な工場を建設し全世界に向け輸出する事に成功しているのだそうである

キャノンは2005年4月に年間生産能力約800万台のレーザープリンター工場の建設に着工し、2007年から生産を開始する。製品は全量、輸出に回される。レーザープリンター生産工場としては世界最大規模で、全世界の同製品需要の35%に応えることができる。ーー(2005年1月)

中国華南地域からバイタルパーツを含む部品を持ち込み、人件費が廉価なベトナムで組み立て製品を爆食する中国に引き取ったり、全世界に輸出している訳である。日本市場は世界市場の一つという位置付けではないかと推測する。

今後、メコン川を横断する「インドシナ東西回廊」が完成すれば、東アジアの物流、商流は激変する訳で、Canonの戦略は見事と言う他はない。他の製造業に示唆するものも少なくないと思う。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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