テレビの受難~2万円台32インチで実現できるスマートTV

2012年03月01日 07:00

32インチ液晶テレビを買った。2万8800円。東芝製。居間用。

値段の割に性能は驚くほど高い。フルHDではないものの画質はよい。HDMI端子は3系統に、ハードディスクを付ければ録画機能も利用できる。オーディオの光デジタル端子にも対応。これだけ機能が盛り込んで、この値段では、家電メーカーが利益を出せないのも当然だと感じた。

それはともかく、この安価なテレビで話題になっているスマートTVの体験は実現できたと感じている。専用セットトップボックスといったものではなく、パソコンをHDMIで接続するだけで、テレビの視聴体験が大きく変わったのだ。


元々所有していたホームシアター環境を居間に持ってきて接続し、また所有するMacBook AirにHDMI端子で出力できる専用ケーブルを購入し接続、無線LANを経由して利用。

それでコタツに入ってミカンを食べつつ、片っ端から、YouTubeとニコニコ動画の映像を見て回った。これは通常のテレビ番組はますます不要になると痛感した。

例えば、エンターテインメントでは、ニコニコ動画の「初音ミク」のコンサート映像は、音声の質も良く、大きな画面で見ているので、圧倒的な臨場感がある。また、ニコニコ動画には下手なバラエティ番組より、おもしろい番組は少なくない。「史上最大の(中略)マインクラフト実況 」というユーザーが作ったドキュメンタリー方式のバラエティの番組シリーズがある。無人島でサバイバルするゲームで、演出も凝っていて見ていて飽きない。失敗の連続が絶妙で、家族受けも極めてよく、腹を抱えて笑った。

もちろん、それ以外のジャンルの討論番組なども見た。10年12月にニコニコ生放送の公式番組で「メディアの未来像を考える」はテレビの未来がどうなるのかを議論していて、なんだか妙な気分になった。田原総一郎氏が「テレビはむちゃくちゃだったからラジオ局から移ったんです」とテレビ放送が始まった初期の時代を振り返っていたのをおもしろく聞いた。ルールも前例もない時代には、イノベーションに直接関われる機会が生まれやすい

仕事柄、海外のYouTubeの海外ゲームサイトのビデオレビューも見ることが多い。連続再生してくれるページもあり、商用利用のためハイビジョン画質で、音質も一般ユーザー投稿よりもよい。完全にテレビ番組を見ているのと視聴体験は変わらない

現状、スマートTVの姿はテレビに統合される機能でアピールされることが少なくない。ただ、テレビの機能を強化するより、手元のパソコンの画面をつなげて表示する方が合理的と思えてきている。ただ、それはITリテラシーを持つ人間の理屈かもしれない。一般に普及するにはもっと敷居を下げる必要があるだろう。

家電メーカー各社は、価格競争で落ち込んだ薄型テレビに付加価値としてスマートTVを組み合わせ、高価格帯を維持しようとする戦略を進めている。いち早くグーグルTVに進出したソニーの製品は、米Amazonでは、32インチが440ドル、40インチが750ドル。対応テレビが比較的安価に売られているようにみえるが、実はそうでもない。

アメリカで強力な価格競争力を持っているのは、中国のTCL集団のテレビだ。日本非進出だが、40インチで350ドル(約2万8000円)Displaybankの調査では、11年にTCL集団は国内需要をバックに前年度比で75%成長、世界シェアも4%を獲得し、世界第7位に付けている。第6位はシャープの6%で、中国企業が、日本家電メーカーを追い抜く日も迫りつつある。

TCL集団とソニーのグーグルTVを比較すると、40インチは400ドルも違う。その差額で安価なパソコンが買えてしまう。

一方、セットトップボックスのアプローチもアメリカは進んでいる。アップルはApple TVをiPhoneやiPadの画面を表示する戦略ハードに位置づけ、マイクロソフトは北米で好調なゲーム機Xbox360を中心に展開を進めている。日本企業で可能性があるのは、任天堂が今年発売を予定のゲーム機Wii Uで、価格やサービス内容次第では、この分野で台風の眼になりうる。

HDMIでテレビに接続できて、ネットに自由にアクセスできる安価なハードがあれば十分なため、主導権はテレビ単体にはない。結局、肝心のコンテンツはネットの側にあり、標準化を迫るのはそちら側だからだ。操作面の多少の面倒くささが解消されるなら、テレビは今後ますますデータを映し出すドラム缶に過ぎなくなるだろう。そのため、家電メーカーにとっての苦難は続くように思える。

そして普及と共に、今後一般のTVは見られることはますます難しくなるだろう。今は、テレビ番組製作自体が、一般への開放が進む「むちゃくちゃできる」時代でもある。ネット上の動画による番組は多大な創意工夫の余地があり、今以上に表現方法が花開く時代が続くのだろう。

家電量販店で、デモ映像として、ニコニコ動画の初音ミクのコンサートが、大画面のホームシアターで上映され、豪華かつ簡単に出力できますというのが売りにする時代もすぐと感じている。一消費者としては楽しそうではないか?

ジャーナリスト(ゲーム・IT) @kiyoshi_shin

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